2022 Fiscal Year Research-status Report
高温超伝導線材の電気-熱連成現象解明による限流器の復帰時間推定モデル構築
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22K20434
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
結城 光平 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 助教 (00963563)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ポーラス体 / 沸騰熱伝達 / 超伝導限流器 / 超伝導復帰時間 / ホットスポット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,超伝導限流器実現の重要課題である「超伝導線材のホットスポット抑制」をポーラス安定化材により実現することを目的としている. 本年度(2022年度)は,ポーラス安定化材を一様構造としてモデル化し,3次元の電気・熱連成解析によりホットスポットが発生した際の常伝導領域の伝播速度を計算した.その結果,ポーラス安定化材と超伝導線材の接合部における発熱により常伝導転移が促進され,通常の金属箔安定化材に比べ2倍程度まで常伝導伝播速度が向上することを確認した.また,ポーラス安定化材の孔径(接合面積)の影響を評価したところ,孔径が超伝導線材の幅に比べ小さすぎる場合には,常伝導伝播が促進されにくいことも示した. また,ポーラス安定化材を接合した際の熱伝達性能推定モデルの構築に向け,ポーラス安定化材内における沸騰冷却モデルを提案した.本モデルでは,ポーラス安定化材の中に冷却液が保持されるという仮説を基に,冷却液の保持領域とその蒸発量を計算し,潜熱による除熱量を概算した.その結果,超伝導線材が300 Kから77 Kまで除熱される過程において,実験で得られた熱流束と本モデルで得られた熱流束の相対誤差は10%程度であり,液体保持がポーラス安定化材の重要な役割であることを示した.また,ポーラス安定化材と超伝導線材の接合に利用する材料(接合材料)の決定に向け,沸騰面の熱物性により沸騰冷却性能が変化する要因について,先行研究でのデータを基に考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,事故電流通電時の超伝導線材の温度分布評価に対する解析体系は構築できており,ポーラス安定化材の構造(線径や孔径)の影響評価をパラメータスタディとして実施している段階である. また,ポーラス安定化材による除熱性能の向上メカニズムに関しても検討しており,既に実験で得られた除熱性能との相対誤差が10%程度となるモデルを提案できていることから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は以下の(1)~(3)の実施内容により構成されるため,それぞれの推進方策を示す. 「(1) 事故電流通電時の電流・温度分布評価」:ホットスポット抑制が可能な条件を電気-熱連成数値解析により抽出する.現在までに,超伝導線材の温度分布を評価可能な解析体系を構築したため,今後は速やかにパラメータスタディを実施する. 「(2) 事故後の復帰過程での沸騰熱伝達性能評価」:復帰過程の沸騰熱伝達性能を評価する.現在までに,ポーラス安定化材による除熱性能の向上メカニズムに対して,モデルを構築し,実験で得られた除熱性能との相対誤差は10%程度となっている.そこで,今後は実験により,ポーラス安定化材の孔径や線径をパラメータとし,熱伝達性能の推定モデルを導出する. 「(3) 復帰時間推定モデルの構築と実証」:(1)の解析体系に(2)の熱流束/熱伝達率を熱境界条件として組み込み復帰時間推定モデルを構築する.上記(1)と(2)が終了し次第,解析が実施できるよう解析手法を8月中に確立する.
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