2022 Fiscal Year Research-status Report
擬似ベル状態を用いた量子イルミネーションに向けた測定器の構成とその最適設計
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22K20437
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
王 天澄 神奈川大学, 情報学部, 助教 (30962930)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 擬似ベル状態 / 量子イルミネーション / 測定器設計 / 雑音解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に行った研究の要約は次のとおりである. (1)擬似ベル状態を用いた量子イルミネーションの測定器設計:実現可能性の高いデバイスの利用を想定し,ビームスプリッタと光子計数器を用いた測定器の簡易構成を考察した.これは,受信機が送信機の逆操作を行うものであることを考えると,自然な発想と言える.しかし,擬似ベル状態を用いた量子リーティングなどと異なり,量子イルミネーションにおいてはエンタングルド状態が完全に破壊される場合があるため,エンタングルド状態を生成する過程の逆操作による測定器の性能が自明ではない.本研究では,減衰環境における量子イルミネーションの性能を,誤り率規準に基づき評価した結果,擬似ベル状態に本測定器による測定を施した場合は,2モードスクィズド真空状態に量子最適測定を施した場合を凌駕しうることを明らかにした. (2)位相雑音による量子イルミネーションの性能への影響の解明:乱気流や不完全な位相同期などに起因する位相の不完全要因による影響について考察した.まず,測定器で受信量子状態の位相シフトを誤って見積もった場合,すなわちミスマッチが発生した場合の性能評価を行った.その結果,2モードスクィズド真空状態に比べて,擬似ベル状態を用いた場合はミスマッチに対してロバスト性をもつことを明らかにした.次に,位相シフトの不規則変動を統計的に取り扱った,位相雑音が発生した場合の性能評価を行った.その結果,位相雑音の度合いによって性能がすぐに劣化してしまう,2モードスクィズド真空状態とは異なり,擬似ベル状態を用いた場合は古典方式による性能と同程度かそれ以上となることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は,量子測定器の構成とその性能解析であった.それに対して今年度は,簡易的な測定器の構成を検討し,誤り率規準に基づき性能を評価した結果,擬似ベル状態に対する量子最適検出限界までは至っていないが,2モードスクィズド真空状態に対する量子最適検出限界を凌駕しうることを明らかにしたことにより,その有効性を確認できた.さらに,より現実的な環境で発生しうる位相雑音が,量子イルミネーションの性能に対する影響を明らかにした.これらの研究成果については電子情報通信学会総合大会と量子情報ミニワークショップで発表済みである.また,論文誌論文を1件投稿中,特許を1件出願中である.
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Strategy for Future Research Activity |
量子最適検出限界を達成できる測定器の構成と性能評価を検討していく.また,量子イルミネーションは最初は量子Chernoff限界について性能評価が行われたが,本研究では特にワンショットの光パルスに着目し,誤り率による瞬時性能を調べるなどからスタートした.しかし,量子イルミネーションの多様なる応用先を考慮すると,誤り率だけではなく,多数の光パルスを用いた場合の極限性能を見積もることも重要である.そのため,今年度は,性能評価指標としての量子Chernoff限界についても検討していく.
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Causes of Carryover |
計画した通りにほぼ満額の執行となりました. 端数としての16円は次年度の物品費または旅費に吸収される予定です.
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