2022 Fiscal Year Research-status Report
鉄筋コンクリート部材のひび割れ幅の算定精度向上のための付着クリープモデルの開発
Project/Area Number |
22K20450
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
井向 日向 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (50964821)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 持続荷重 / 付着クリープ / ひび割れ幅 / 一軸引張載荷試験 / 乾燥収縮 / 鉄筋コンクリート |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄筋コンクリート部材において、持続荷重が作用した場合およびコンクリートの乾燥収縮が生じた場合の、ひび割れ幅の経時変化を理論的に計算できる付着クリープモデルを開発することを本研究の目的とする。鉄筋コンクリート部材に生じるひび割れの幅は、コンクリートの乾燥収縮に加え、持続荷重の作用(クリープ)によって時間の経過とともに拡がっていく。本研究ではクリープ現象のうち、鉄筋とコンクリートの付着のクリープに着目し、付着クリープがどの程度生じるのか、なぜ生じるのかを明らかにし、現象に即した付着クリープモデルの開発を行う。鉄筋コンクリート部材の引張部を想定した要素実験を行い、持続荷重と乾燥収縮を作用させた場合の供試体の変形と応力を実測するとともに、供試体内部の微視的現象を観察する。要素実験の結果に基づき、付着クリープを表現可能な力学モデルを開発する。さらに開発したモデルに基づき、従来の設計におけるひび割れ幅算定式に、新たに付着クリープの影響を組み込むことで、実構造物のひび割れ幅の算定精度向上を目指す。 これまでの研究により、D10、D13、D19、D22の4つの径の鉄筋を使用した鉄筋コンクリート部材において、持続荷重および乾燥収縮が生じる場合の時間依存変形に関する実験データが取得できた。その結果、付着クリープは鉄筋径によらず同程度生じることが示唆された。ただし、本実験では鉄筋径の変化に伴い、鉄筋比も変化していたため、今後、その点も含めて追加検討を実施する予定である。また、鉄筋コンクリート部材の内部で生じる微視的な現象を観察するための要素実験を一部行った。その結果、供試体内部に生じた微細なひび割れ一本あたりの長さが静的載荷後の供試体よりも持続載荷後の供試体の方が長くなることが確かめられた。持続載荷中における供試体内部のひび割れの進展が付着クリープの発生に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに鉄筋コンクリート部材において、持続荷重が作用する場合および乾燥収縮が生じる場合の時間依存性変形に関する基礎的な実験データを取得するために、部材の引張部を模した供試体の要素実験を実施することができた。計画当初は実験変数として「鉄筋径D13~D25で3水準以上」を掲げていたが、その目標より多く試験を実施することができた(D10、D13、D19、D22)。 また、載荷後の供試体をダイヤモンドカッターで切断し、供試体内部で生じている微細なひび割れの様態を観察する実験にも取り組むことができた。RC供試体の内部に生じた微細なひび割れ一本あたりの長さは,静的載荷後の供試体よりも持続載荷後の供試体の方が長くなることが確かめられた。このことから、持続載荷中におけるRC内部のひび割れの進展が付着クリープの発生に寄与していることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの取り組みで、本研究の学術的問いの一つである「①付着クリープがどの程度生じるのか」について、付着クリープに及ぼす鉄筋径の影響を調べることができた。ただし、研究を進める中で、鉄筋径だけを変えると、鉄筋径とコンクリートの断面積比(鉄筋比)も変わってしまうことが試験結果に影響を及ぼす可能性が示唆された。今後は鉄筋比を変えずに鉄筋径が付着クリープに及ぼす影響を解明するための載荷試験に取り組んでいく予定である。また、計画当初に掲げた、付着クリープに及ぼす相対湿度の影響の解明についても、並行して取り組んでいく予定である。 本研究の学術的問いの一つである「②付着クリープはなぜ生じるのか」について、持続載荷中におけるRC内部のひび割れの進展が付着クリープの発生に寄与していることを明らかにすることができた。ただし、載荷後の供試体を観察するだけでは、載荷中に開いたひび割れの一部が閉口してしまい、精緻なデータを取得できないため、今後は持続載荷中にRC供試体内部で開いたひび割れを検知する技術を適用し、付着クリープ機構に関する検討を行う予定である。また、実験の進捗状況をみて、付着クリープモデルの開発とその検証に取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、実験体系の確立を主眼として研究を進めた。そのため、湿度条件を高湿度に制御した実験を実施しなかったため、実験に用いる変位計が高湿度対応のものでなくても研究を進めることができた。次年度は相対湿度を制御した実験を行う中で高湿度条件下での実験を行う予定である。この実験に、計画当初、購入を予定していた高湿度条件下対応の変位計(測定感度1/500mmのものが4つ、1本あたり8万円程度)が必要となるので、その購入費用として次年度使用額を使用する予定である。
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