2022 Fiscal Year Research-status Report
窒化物の高速相変化現象とそのメモリデバイスへの展開
Project/Area Number |
22K20474
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
双 逸 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (10962144)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 相変化メモリ / 窒化物 / 不揮発メモリ / CrN |
Outline of Annual Research Achievements |
AI、IoT、beyond 5Gの発展により、ネットワークを流通するデータトラフィック量は飛躍的に増加しており、それを支える不揮発性メモリ(NVM)の高速化や大容量化が強く望まれている。現在主流のNVM:フラッシュメモリが微細化の限界を迎えている中、より大幅に高速化かつ省電力化が可能な次世代NVM:相変化メモリ(PCRAM)が注目されている。Ge-Sb-Te(GST)系PCMが実用材に使われており、Intel/Micron社がPCRAMを原理としたSSDを製品化し、従来SSDよりも高速動作かつ長期耐久性を実現している。しかし、GSTでは情報記録にアモルファス相状態を用いるため、幾つかの課題を抱えている。まず、GSTアモルファス相の結晶化温度Tx(~160℃)が低いため、①自動車分野など高温環境下で使用できない、②メモリ素子アレイ構造が更に微細化するとメモリ素子間の熱クロストークが顕在化する、といったように耐熱性に課題を残している。また、アモルファス化のため材料を融解しなければならず、大きなジュール熱エネルギーが必要であり、動作エネルギーがどうしても高くなってしまうという本質的な課題を持つ。最後に、含まれるTe元素は必ずしも環境に優しいものではない。それ故、究極的には、アモルファス相を介さず、かつシンプルな組成であり、環境にも優しい相変化型グリーンメモリ材料の創成が期待されている。本研究では、世界に先駆けて、アモルファス相を介さず大きな電気抵抗変化を示す窒化物系PCM:CrNを提案し、その相変化メカニズム、動作性能を究明し、CrN-PCRAMの実現を目指す。CrN系メモリの相変化メカニズムを解明することで、従来のカルコゲナイドを主役とする相変化材料の枠を大きく拡大する窒化物系相変化材料群の創成が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、CrN相変化材料を中心に窒化物相変化メモリの創成を目指し、その電気伝導特性と相変化挙動について評価を行った。種々の実験的手法を用いて調査した結果、以下の主な成果が得られた。 (1) 成膜圧力によって調整されたCrNのpn伝導機構変換が観察された。通常、CrNはN空孔の存在によりn型伝導を示すが、今回p型CrNを広域X線吸収微細構造で分析した結果、電子受容体として機能するCr空孔が存在し、p型伝導を示すことが明らかとなった。また、p型とn型のCrNの相変化挙動は類似しており、スイッチング機構におけるキャリアの種類による影響は小さいことが示された。これらの結果に関連して、国際および国内の学会で成果を発表した。 (2) 高分解能透過電子顕微鏡を使用して、立方晶CrNから六方晶CrN2相への相変化を観察した。また、電子エネルギー損失分光法マッピングにより明確なNリッチ領域が観察され、相転移に伴うN原子の拡散が示唆された。これに関連して、筆頭著者として国際論文を投稿した(査読中)。 以上の結果は、CrNの電気伝導特性や相変化メカニズムの解明に向けた重要な知見を提供しており、次世代の相変化材料の開発において重要な指針となるものだ。これらの研究進展は期待以上のものであると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、デバイス特性の強化とその電極の影響を調査する。具体的には、フォトリソグラフィ加工技術を用いてメモリデバイスを作製し、CrNメモリ素子の動作性能を明らかにする。先ず、次世代PCRAMは自動車等の高温下における長期使用も期待されるが、CrN両相の耐熱性を調査する。続いて、半導体パラメータアナライザーと高速電気パルス印加(30ns以下)が可能なパルスジェネレーターを併用し、メモリ動作性能(速度、電力、耐熱性、寿命)を見極める。また、高温下での動作や寿命についても評価を行う。更に、NCrGTの先行研究で、メモリ素子抵抗が電極との接触抵抗に支配される事が分かっている。故に、種々の電極材料を用いた CrNメモリ素子を作製し、抵抗変化挙動に及ぼす電極依存性を調査する。その後、最も大きな抵抗差を示す電極を用いたメモリ素子において、電極/CrNの接触面積やCrN膜厚の依存性を評価する。尚、消費エネルギーが最も低くなるメモリ素子構造でメモリ性能を見極める。
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Research Products
(2 results)