2022 Fiscal Year Research-status Report
Biomolecular sensing in all-dielectric metasurfaces with collective resonances
Project/Area Number |
22K20496
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
渡邊 敬介 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員 (90945362)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | メタサーフェス / BIC / シリコン / ナノギャップ / バイオセンサ / 強結合 / 赤外分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、誘電体ナノ構造 (メタサーフェス) の周期性に起因する効果としてBound state in the continuum (BIC) と呼ばれる光の局在状態に着目し、高感度な生体分子センシング、赤外分光を実現することを目指している。従来このような目的のためには金属ナノ構造のプラズモン共鳴が用いられてきたが、その共鳴スペクトル形状は主に金属材料の吸収損失に制限され、応用上の障壁があった。全誘電体メタサーフェスは金属に比べ吸収ロスが小さく、Mie共鳴に基づくシャープなスペクトルを利用できるためセンシング用途として有望である。本年度は、シリコンベースのメタサーフェスにおいて、周期ナノ構造の個々のユニット構造の対称性を破ることで得られる準BICモードを用いた(1)屈折率センシング特性、(2)分子振動との結合特性の評価を行い、いずれにおいても提案構造がセンシングに有用であることを見出した。特に(1)においてはBIC起因する共鳴効果 (=シャープなスペクトル) とナノギャップの効果 (=光と物質の相互作用増大) を組み合わせることで、これまでに実現されてきた誘電体メタサーフェスの中で最大の性能指数を実現した。(2)においてはメタサーフェスの共鳴モードと中赤外域での分子振動の結合条件が、周期ナノ構造に与える非対称量に応じて容易に変えることができること、さらに分子振動の表面増強効果が最大となる非対称量が存在することを見出した。以上の結果から、準BICモードを利用した誘電体メタサーフェスが分子センシングにおいて有用であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
誘電体メタサーフェスのシミュレーション環境の構築、製作、測定系の構築を一貫して行えるようにするとともに、センシング特性の評価を可能とした。準BICモードの特性は誘電体ナノ構造の製作誤差に大きく影響されるものの、最適化された製作条件において十分に狭いナノギャップ幅と高いQ値を両立するメタサーフェスの製作に成功した。センシング特性の評価においては、屈折率分解能、増強分子振動シグナルのいずれにおいても、ナノ構造の非対称パラメータを変えることで変化する放射損失の制御が大きく寄与し、最適な条件が得られることを見出した。この実験結果はシミュレーション、数値計算結果ともよく一致することを確かめた。以上から、研究課題はおおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、最適なセンシング特性が得られるメタサーフェスの構造条件が明らかになったため、今後はこの条件における生体分子のセンシングに取り組み、理論との対応を確認する。具体的には、共鳴スペクトルシフトに基づく手法ではモデルタンパク質の検出を試み、その検出限界濃度を評価する。赤外分光への応用においては、分子薄膜をメタサーフェス表面にコーティングすることで分子振動の表面増強度を評価する。さらにナノギャップに局在した電場増強を利用した分子振動シグナルの増強効果についても検討し、準BICモードに基づく誘電体メタサーフェスの有用性を定量的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた半導体ウエハの購入を次年度に変更しため、使用額に変更が生じた。
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