2023 Fiscal Year Research-status Report
疑似上陸環境で飼育したカエルの多階層的心臓解析から考える心臓進化戦略転換の起点
Project/Area Number |
22K20506
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 愛 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00963464)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 脊椎動物 / 上陸 / 心室 / 拡張機能 / 酸素濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,“脊椎動物の上陸が心臓の拡張機能低下の外的要因であったのか”という問いに答えるために,疑似上陸環境で飼育したカエルの多階層的な心臓解析を目指している.昨年度は疑似上陸環境での飼育環境の構築,動物モデルの作製を検討した.疑似上陸環境として,水中における高酸素濃度環境下での飼育を検討し,業務用の酸素ポンプを使用することで,通常の2倍の酸素濃度環境の構築に成功した.高酸素濃度環境で2か月間,水生のアフリカツメガエルを飼育し,通常酸素濃度飼育のカエルと比較することで,酸素濃度の上昇によるカエル心室の力学特性の変化を調べた.心室の加圧試験を行うことで,心室硬さを評価したところ,高酸素濃度飼育のカエルの方が,通常酸素濃度飼育のカエルと比較して,心室が硬かった.陸生のアズマヒキガエルの心室硬さのデータと比較したところ,高酸素濃度飼育のカエルと同程度であった.酸素濃度の上昇と心室硬化との関係について調査するために,組織レベルで心室構造が変化したかどうかを観察した.マッソントリクローム染色を行ったところ,高酸素濃度飼育と通常酸素濃度飼育のカエルの間で,心筋組織の緻密度や心室壁の緻密層の厚さに違いはなかった.生体内組織の中で特に硬いコラーゲンについて比較したところ,心室壁の最外層にあるコラーゲン層の厚さに違いはなかった.引き続き,酸素濃度の上昇と心室硬化との関係を解明するため,高酸素濃度飼育と通常酸素濃度飼育のカエルの間で,内腔部分のコラーゲンや細胞の形態,力学特性,また遺伝子レベルで違いがないかを調査する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定であった疑似上陸モデルを用いた検証について,高酸素濃度環境の長期的維持が想定を超える難易度であり,環境構築に時間がかかった.また,酸素濃度上昇の影響を確認するためには長期的に飼育する必要があり,一部実験をやり残してしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,高酸素濃度環境における飼育モデルから,酸素濃度の上昇と心室硬化との関係について組織レベルで探るとともに,蛍光染色やRNA解析等を行うことで細胞レベル・遺伝子レベルでも解析しようと考えている.
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Causes of Carryover |
高酸素濃度環境飼育モデル作製に時間がかかり,十分に実験が遂行できなかった.そのため持ち越した予算は,実施できなかった実験で用いる消耗品や,RNA解析や組織染色等の外注費に使用する予定である.
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