2022 Fiscal Year Research-status Report
網膜集積性光学ナノヒーターによる加齢黄斑変性関連サイトカイン分泌バランスの正常化
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22K20510
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
福田 亮介 富山県立大学, 工学部, 研究員 (30964704)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 光熱変換材料 / 網膜色素上皮細胞 / リポタンパク質改変体 / 脂質蓄積物 / 近赤外応答性 / 加齢黄斑変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は網膜色素上皮細胞由来のサイトカイン分泌バランス制御のために利用する近赤外光線温熱材料の開発と、疾患モデル細胞の開発に着手した。まず光線温熱材料として用いるインドシアニングリーン会合体(IJA)の形成反応と、リポタンパク質改変体(LP)との複合化反応を進めた。比較対象として、既報で持続的な光線温熱効果を示すことが知られているIJA-リポソーム複合体も調製した。得られたIJA-LP複合体は、IJA-リポソーム複合体と同様に持続的な近赤外光線温熱効果を示し、短時間の光照射により退色するインドシアニングリーンに対する優位性が明らかになった。次に作製した2つのナノ粒子の脂質蓄積物との相互作用を調べた。IJAの代わりに可視領域で蛍光検出可能なシアニン色素を用いてLPおよびリポソームを蛍光標識し、長期培養により脂質蓄積物を形成させた単層ヒト網膜色素上皮細胞株(ARPE-19)に作用させた。その結果LPとリポソームのいずれの場合も、細胞毒性を示すことなくシアニン色素を脂質蓄積物に高度に集積させた。さらにその集積性はリポソームよりもLPを用いた場合でより高いことがわかった。LPおよびリポソームによるシアニン色素の脂質蓄積物送達メカニズムを現在調査中であり、その中でシアニン色素が血清成分に移行後に脂質蓄積物に送達されることがわかっている。また上記の単層ARPE-19細胞を30分間43度で処理したところ、37度で処理した場合と比較して、脂質蓄積物の平均サイズが顕著に小さくなることが明らかになった。これは高温処理が脂質蓄積解消に寄与し得ることを支持する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きなポイントとなる光加熱に利用するための材料開発に成功し、その物理化学特性と網膜由来脂質蓄積物への結合を明らかにできた。また網膜色素上皮において生成した脂質蓄積物が高温環境で崩壊することが示唆され、温熱療法の有効性を支持した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた成果をもとに、まずはIJA-LP複合体から光生成される熱により脂質蓄積が解消されるか検証する。続いて加齢黄斑変性患者により近いサイトカイン分泌方向性を示す網膜色素上皮モデル細胞の作製にも着手する。先行研究により、ニトロ化反応を受けた細胞外マトリックスが、網膜色素上皮のサイトカイン分泌バランスを乱し、加齢黄斑変性患者の同組織により近いサイトカイン分泌方向性を示すことが知られている。現在、加齢により機能低下した網膜色素上皮を再現するために、ニトロ化処理した細胞外マトリックスでコーティングした細胞培養インサート上でARPE-19を培養中である。今後、長期単層培養を経て得られた培養液に含まれる複数の病態関連サイトカインを調べ、IJA-LP複合体を用いる光線温熱療法により、それらの分泌バランスの正常化を目指す。
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