2022 Fiscal Year Research-status Report
短鎖型自己集合性ペプチドを用いた中分子医薬品の次世代型DDSの開発-口腔粘膜への応用
Project/Area Number |
22K20515
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
谷口 卓 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (80964569)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | エラスチンペプチド / コアセルベーション / 自己集合能 / 薬物送達システム |
Outline of Annual Research Achievements |
中分子医薬品は標的特異性の高さなどから次世代創薬として注目されているが、安定性が低いため、より有効な薬物送達システムの開発が求められている。本研究では、生体適合性の高いエラスチン由来の短鎖型ペプチド(Short-ELP)を利用した、次世代創薬に対応可能なDDS担体の開発を目指す。本研究は2年計画であり、初年度である当該年度では、温度応答性の自己集合能を有するShort-ELPの合成を行うとともに、様々な分子量サイズのモデル薬物を用いた薬物包含・徐放試験を実施した。 まずShort-ELPの合成としては、エラスチンタンパク質がもつ反復配列を模倣した(Phe-Pro-Gly-Val-Gly)n (n=5)配列から成る25残基のペプチドをFmoc固相合成法により化学合成した。我々は以前にShort-ELPが水中で温度応答性の自己集合能を有することを明らかにしているが、今回、PBS溶媒において合成したShort-ELPの自己集合能の評価を行ったところ、従来の5分の1程度の濃度で同等の自己集合能を有することが確認された。次に、DDS担体としての応用が期待できる薬物の分子量サイズを調べる目的で、合成したShort-ELPの自己集合特性を利用した薬物包含および徐放試験を実施した。種々のモデル薬物を用いて試験したところ、Short-ELPは一般的な低分子医薬品からその3倍程度の分子量の薬物まで包含することが可能であり、また長期間にわたり徐放できることが明らかとなった。これらの結果から、次年度の口腔粘膜透過試験に利用できるDDS担体としてのShort-ELPを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の方針は概ね予定通りであり、初年度において目的のペプチドの合成および、いくつかの薬物を用いた包含・徐放試験を実施することができた。しかしながら、新型コロナによる半導体不足にともなう装置搬入の遅れが生じたため、包含・徐放試験で予定していた全てのモデル薬物に対しての試験は完了していない。そのため引き続き包含・徐放試験を実施していく予定である。 本年度は、温度応答性の自己集合能を有するShort-ELPの合成と自己集合能の評価および種々のモデル薬物を用いた薬物包含・徐放試験を実施した。以前、我々はShort-ELPが水中で温度応答性の自己集合能を有することを明らかにした。今回、PBS溶媒を用いることで、水中では自己集合能を示さないような低濃度においても自己集合能を示すことを明らかとし、より低コストでのDDS担体開発の可能性が示唆された。次に、得られたShort-ELPを用いて薬物包含・徐放試験を実施した結果、様々な分子量の薬物を包含・徐放できることが明らかとなった。現在、Short-ELPが包含・徐放可能な薬物の分子量サイズをより詳細に調べる目的で、さらに分子量が大きなモデル薬物を用いた薬物・包含徐放を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、Short-ELPが包含・徐放可能な薬物の分子量サイズをより詳細に調べる目的で、これまで使用したモデル薬物よりもさらに大きな薬物を用いた包含・徐放試験を実施する。現在、担体であるShort-ELPよりも大きな分子量のモデル薬物を用いた薬物・包含徐放を検討中である。予備実験の結果では、薬物濃度や定量方法の検討が必要であることがわかった。これらの試験が完了次第、当初の予定通り、三次元培養口腔モデルを用いた口腔粘膜透過試験を実施することで、口腔粘膜からの吸収がShort-ELPをDDS担体とした新たなターゲットになりうるかについての検討を行う。
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Causes of Carryover |
初年度の研究が順調に進んでいるため、必要以上の経費をかけずに済んだ。 次年度以降の経費のかさむ実験に使用する予定である。
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