2022 Fiscal Year Research-status Report
光感受性物質含有複合脂質膜を用いたがん治療・検出薬の開発に関する研究
Project/Area Number |
22K20516
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
奥村 真樹 崇城大学, 生物生命学部, 助教 (90965592)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ナノメディシン / ナノ粒子 / ハイブリッドリポソーム / アポトーシス / 光線力学的療法 / PDT / 活性酸素 / セラノスティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
がん治療においては、遠隔臓器へ転移した腫瘍の治療が重要であるが、使用される抗がん剤の重篤な副作用が問題となっている。複合脂質膜(ハイブリッドリポソーム:HL)は、正常細胞よりがん細胞へ選択的に蓄積し、アポトーシス誘導による治療効果を有する唯一のリポソームである。また、抗がん剤を含有しないことから長期反復投与や臨床試験においても高い安全性が明らかになっている。近年、副作用の少ない治療法として、光線力学的療法(PDT)が注目されている。本研究においては、HLに光感受性物質を含有させたHL/ICGを創製し、腫瘍に対するPDTによる治療を目指す。 本年度は、ヒト食道がん(TE-4)細胞およびマウス乳がん(4T1-Luc)細胞に対するHLの治療効果および光感受性物質含有リポソーム(HL/ICG)の光線力学的療法による治療について検討した。HLのTE-4細胞に対するIC50値は94μMであり増殖を顕著に抑制した。PI assayによるDNA断片化率の測定からHLのTE-4細胞に対するアポトーシス誘導が明らかとなった。さらにHLは添加直後からTE-4細胞の膜流動性を増大させた。HL/ICGの蛍光顕微鏡を用いた観察で、TE-4細胞に対して蓄積することが確認された。さらに、増殖抑制試験からHL/ICGはTE-4細胞の増殖をHLと同様に抑制することを明らかにした。HL/ICGの4T1-Luc細胞に対するPDTによる治療をin vitro において検討したところ、励起光の照射時間に比例して生存率が低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、がん細胞に対するハイブリッドリポソーム(HL)を用いた治療効果および光感受性物質含有HL(HL/ICG)の光線力学的療法(PDT)への応用を目的としている。2022年度は、食道がん細胞に対するHLの優れた増殖抑制効果およびアポトーシス誘導について明らかにした。さらに、PDTへの応用に関して、HL/ICGがHLと同様の増殖抑制効果を有しており、励起光の照射時間に比例して増殖抑制効果が強くなっており、PDTによる治療の可能性を示した。以上のように、光感受性物質含有リポソームの食道がんおよび乳がんに対する制がん効果が得られ、当初の計画通りおおむね順調に研究課題は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、HL/ICGを用いた光線力学的療法(PDT)を目指し、以下の3点について検討する。 (1)がん細胞に対する光線力学的療法による増殖抑制効果 (2)HL/ICGの光線力学的療法における治療メカニズムの解明 (3)担がんモデルマウスに対する光線力学的療法による治療効果の評価およびアポトーシス誘導の評価 これらの結果から、HL/ICGの乳がんや食道がんに対するPDTによる増殖抑制効果および細胞死メカニズムの解明を行う。
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Causes of Carryover |
理由:研究を遂行する過程で必要になった研究設備が、オーダーメイドのため納品に時間が掛かり、年度をまたいだ納品となるため。 使用計画:研究設備および消耗品の購入に使用する。
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