2022 Fiscal Year Research-status Report
固体C-H変換/固体フォトレドックス反応による難容性化合物の構造修飾法の開発
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22K20523
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
一色 遼大 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (70965227)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 固体反応 / 固体フォトレドックス反応 / ボールミル / C-H官能基化 / カップリング反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ボールミル装置を用いた固体有機合成が注目を集めている。本手法は、溶液反応には適用困難な難溶性化合物の構造修飾を可能にする革新的な有機合成技術である。しかし、当該分野は発展途上であり適用可能な反応例が少ない。そこで、本研究ではメカノケミカル合成の一般性、有用性を向上させるべく、難溶性芳香族化合物の固体C-H変換反応の開発を目的とした。具体的に、固体反応場で進行する難溶性芳香族化合物のスルホニウム塩形成反応、スルホニウム塩に対する固体カップリング反応を開発する。 また、スルホニウム塩の変換反応としてフォトレドックス触媒を用いた反応を利用することで、固体フォトレドックス反応という新領域の研究の開発にも挑戦する。フォトレドックス反応の課題とされる、過剰量の溶媒の使用、厳密な脱気条件、スケールアップが困難であるといった種々の課題の解決にもつながると考えている。 当該年度は、固体フォトレドックス反応の確立を志向した本研究の足掛かりとして、固体中のラジカル種の挙動を調査すべく酸化的開環型フッ素化反応の固体反応化を試みた。その結果、固体反応化することで、溶液中では空気下不安定なアルキルラジカル反応種を空気下安定に取り扱うことができることを発見した。また、固体フォトレドックス反応の足掛かりとして、ニッケル、フォトレドックス共同触媒を用いた還元的カップリング反応が効率的に進行することも見出した。 本年度、これらの反応から得られた知見を活かすことで、当研究の目的である難溶性芳香族化合物の固体C-H変換反応の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の段階では、初年度にスルホニウム塩形成反応を開発することを予定していた。しかし、予定を変更し固体フォトレドックス反応による官能基化反応の開発を初年度に行うこととした。 固体フォトレドックス反応の開発を志向し、固体中でのラジカル反応種の挙動を調査すべく、環状アルコールの酸化的開裂を伴うフッ素化反応の固体反応化に成功した。この研究を通して、固体反応化することで溶液中では空気下不安定なラジカル種を不活性ガスを使用せずに安定に取り扱えることを見出した。 また、モデル反応としてニッケル、光触媒を用いた還元的カップリング反応の固体反応化にも成功した。本反応でも不溶性化合物の化学修飾、空気下での反応、反応時間の短縮といった様々な利点があることを明らかにした。 当初は一年以上かけて行う予定であった固体フォトレドックス反応の開発指針を打ち立てることに成功したため、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、難溶性芳香族化合物の固体C-Hスルホニウム塩形成反応の開発に着手する。ピレンやコラニュレン等のPAHsを反応させるため、高温条件で固体反応を促進する 加熱ボールミル法を採用する。また、少量の溶媒を添加し、化合物間の分子間相互作用を弱め反応性を向上させるLAG法も同時に検討する。ま た、本研究は単なるスルホニウム塩形成ではなく固体反応場で高活性なスルホニウム塩の合成を目的としている。そこで、用いるスルホキシド に嵩高いアルキル基や長鎖のアルキル基などを導入することで固体状態の反応性の向上を狙う。 また、得られたスルホニウム塩に対して、これまでに見出している固体フォトレドックス反応の条件を付すことで形式的なC-H官能基化反応の実現を目指す。
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Research Products
(5 results)