2022 Fiscal Year Research-status Report
Structural chemistry of chiral diamond twin
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22K20527
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福永 隼也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90962390)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | キラリティ / ナノカーボン / ダイアモンドの双子 / 構造化学 / π電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイアモンドは見た目だけでなくその構造も美しく,科学者の興味を惹き続けている.その構造の特徴は「強等方性」と「完全対称性」という性質されるが,近年その特徴を併せ持つ新しい炭素性3次元物質「ダイアモンドの双子」の存在が提唱されている.特筆すべきは,ダイアモンドの双子には,ダイアモンドにはないキラリティが存在するという点である.「ダイアモンドの双子のキラリティに着目した構造化学」と題した本研究は,ダイアモンドの双子に存在するキラリティの性質を構造化学の観点から解き明かそうとするものである. 本年度においては,研究計画に基づいて「構造拡張」をキーワードに検討を進めた.金属イオンとの相互作用とそのキラリティの伝播を明らかにすることを目的に,ダイアモンドの双子の最小かご分子の構造を多様化する合成ルートを開拓した.この検討の中で得られた分子において,ホスト-ゲスト化学に関連する想定外の発見もあり,解析を続けている.また,柔軟に形成・分解をする部位を組み込むことによって,最小かご単位を2つ融合させた構造へのアクセスも可能となった.現在,構造解析を検討中であるが,隣り合うかご構造同士でキラリティが伝播し,ネットワーク全体でキラリティが揃った状態が実現されている.以上のように,ダイアモンドの双子の構造を活用した分子デザイン・合成ルートの開発を進めることで,そのキラリティに由来する構造・物性に関する知見を明らかにしてきている.また,キラリティを持つ筒状/螺旋状ナノカーボン分子の物性に関する研究成果も報告している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画段階での目標にあげた「キラリティ伝播を活用した構造拡張」においては,合成ルートを開拓し足掛かりとなる分子群の合成に成功していることから,おおむね当初の想定通りに検討が進んでいると言える.一方,その中で得られた,ホスト-ゲスト化学に関する知見や,新たな分子デザインによる予備的な結果は,計画段階では想定していないものであった.
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Strategy for Future Research Activity |
順調に計画が進行している部分については,金属イオンとの相互作用とそのキラリティの伝播を明らかにするという目的に向けて,計画どおりに進めていくこととする.新たな発見があった結果についても検討を続ける.柔軟に形成・分解をする部位を組み込むという分子デザインの有効性も示されつつあるので,この戦略も同時に推し進めることとする.
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Causes of Carryover |
本年度は,構造拡張を目指して合成ルートの開拓に取り組んだ.当初の計画よりもスムーズに合成が進んだため,物品費が想定よりも少ない金額で済んだ.ただ,来年度以降も,合成ルートの改良や,物性評価へ向けた合成スケールの向上が必要なため,次年度使用額はそれらにあてる予定である.
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