2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of Stable Carbene Motifs that Bring out the Characteristic Properties of Group 16 Elements and Their Application to Synthetic Chemistry
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22K20541
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
増田 涼介 学習院大学, 理学部, 助教 (30965794)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | カルベン / カルコゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
カルベンは電気的に中性な炭素活性種であり、触媒や配位子として利用するために安定性と反応性を向上させる研究が盛んに行われてきた。カルベンの安定化には隣接ヘテロ原子の導入が有効であるが、有機合成として頻用されるものの多くは隣接窒素原子を有するものに限定されており、1991年のN-ヘテロ環状カルベン (NHC) の発見から基本的な分子設計は変化していない。本研究では、カルベンの特徴であるσ供与性とπ受容性を制御するため、高周期16族元素を含む新たなカルベンモチーフの創製を目指して検討を行うこととした。具体的には、1) カルベン前駆体となる新規カルコゲノカルボニル化合物の合成および2) カルコゲノカルボニル化合物の1,2-転位による新規カルベンの発生である。本年度はこれらに注力し研究を遂行した。 その結果、1) については、未踏の新規化学種も含む14族チオアシルメタロイドの簡便合成法の確立に成功するとともに、その化学的性質について実験/理論計算の両面から明らかにした。本手法は未だ基質の範囲には課題が残されるものの、既存のカルボニル化合物とは性質の異なるチオアシルゲルマンなどの化合物群を迅速に展開できるものと期待される。また理論計算から、14族チオアシルメタロイドから発生しうる、窒素を有さない硫黄隣接カルベンは、アシルメタロイドから発生するシロキシカルベンよりも高いσ供与性とπ受容性を有することが示唆された。この結果は、元素展開による本研究の分子設計指針が有効であることを示しており、広汎で独創性の高い反応開発に繋がるものと考えている。 2) については、合成したチオアシルメタロイドの熱や光に対する反応性を調査し、置換元素により安定性や反応性に対して顕著に相違が生じることがわかった。また限られた条件ではあるが、1,2-転位によるカルベン生成を経たと考えられる生成物が得られることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で述べたような、カルベン前駆体である新規14族カルコゲノアシルメタロイドの合成法を確立できており、合成した化合物の基本的な安定性や反応性について精査することができた。これらの基本的な知見を基に研究を遂行すれば、目的は達成は十分視野に入ると考えており、順調に進展しているといえる。光や熱による1,2-転位については、置換元素によって熱的性質や光照射下での挙動が変化することが明らかになってきているため、適切な元素の組み合わせを見出せば、有機合成として実用可能なレベルの新規な安定カルべンを創製できると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
実績概要に示した1) について方法論が確立されたため、これを用いてより容易に1,2-転位を起こすことのできるカルコゲノカルボニル化合物を網羅的に合成する計画である。さらに2) について詳細に検討し、1)で合成した未踏のカルコゲノカルボニル群から、汎用性の高いカルベンを簡便に発生できる手法の確立を推進する計画である。
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