2022 Fiscal Year Annual Research Report
First-principles study on positron binding and annihilation mechanisms for positronic clusters
Project/Area Number |
22K20550
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉田 大輔 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (50963261)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2023-03-31
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Keywords | 陽電子化合物 / エキゾチック分子 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
陽電子は電子の反粒子であり、物質内電子によって捕獲され一時的に束縛状態を形成し、電子と対消滅する際に数本のガンマ線を放出する.この性質を応用した陽電子消滅法は、材料科学における結晶格子欠陥や電子構造の非破壊精密測定や陽電子断層撮影法に代表される医療診断技術などに応用されている。分子やクラスターを含む様々な階層の物質に対して、その組成・構造や電子状態のプローブとしての陽電子特性の可能性を探るために、陽電子化合物における電子・陽電子状態を高精度に計算するための手法開発を行なってきた。 まず、多成分分子軌道計算法を拡張し、大規模な展開波動関数による変分法を用いて分子クラスターの陽電子化合物に関する系統研究を行なった。さらに、多成分分子軌道論に基づいた電子陽電子対消滅率の解析手法を実装した。水やハロゲン化水素などの水素化無機分子や、二酸化炭素などの無極性分子は、単分子状態では陽電子親和性を持たないことが知られていたが、水素結合やvan der Waals力のような分子間相互作用を介した分子クラスターを形成することによって陽電子を束縛する機構を解明した。本研究より、陽電子反応の詳細が不明であった実験データを説明することに成功しただけでなく、クラスター固有の物理化学特性と関連した陽電子親和力の回帰モデルを構築した。これらの解析により、陽電子の対消滅特性がクラスターの組成やサイズ、構造異性体等を特徴づけるための物質プローブになり得ることを示すことに成功した。 さらに現在、核医学応用への貢献を目指し、原子核同位体効果等も含めた陽電子束縛状態の高精度解析のために、Gauss関数展開法の一般化した第一原理計算コードの開発を行っている。
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