2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K20551
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平本 薫 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (40963038)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 電気化学発光 / 脂質二分子膜 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年は、①電極表面への脂質二分子膜の形成条件の確立、②電位印加プログラムの作製、③脂質膜を介した電流と発光の紐づけ、に関して研究を進めた。 ①では代表的なリン脂質の一つであるジパルミトイルホスファチジルコリン(DOPC)のモデル脂質二分子膜を酸化インジウムスズ(ITO)電極上に形成し、ルテニウムビピリジン錯体の電気化学発光を利用して、膜の性質を評価した。基板をITO電極としたのは、透明であるため蛍光顕微鏡での観察も容易であり、かつルテニウム錯体の酸化に適した電位窓を持つためである。ITO電極上に形成した脂質膜は、光褪色後蛍光回復法によって流動性のある膜であることを確認した。②では電圧印加直後の電気化学発光を検出することで、膜表面に焦点を合わせた電気化学発光イメージが取得できることがわかった。発光種の拡散層が成長してしまうと、解像度が悪化するため、今後さらに電圧印加とシャッタータイミングの最適化・同期が必要である。③ではルテニウム錯体-トリプロピルアミンの電気化学発光反応と電流情報を同時取得する顕微鏡システムを立ち上げた。脂質膜を介することで電気化学発光が弱まるが完全には消失しないことがわかった。この性質を利用し脂質二分子膜上の欠陥(ディフェクト)や膜上の小胞が発光強度の違いとしてイメージングできる予備的成果が得られた。一方で、発光情報と脂質膜の電気的な特性や変動を詳細に紐づけるには、脂質二分子膜形成の再現性を高める必要がある。また、電流情報取得に際するノイズを抑えるためのシールドの構築が必要である。 電気化学発光を利用して平面脂質二分子膜をイメージングする技術は報告されておらず、本研究でノンラベルの脂質膜表面を可視化できたことは新たな分析技術の構築につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電極上に形成した脂質二分子膜の電気化学発光を検出する顕微鏡システムを立ち上げることができた。このシステムを使って脂質二分子膜上のディフェクトや小胞のイメージングに成功している。一方、脂質二分子膜の詳細な電気化学発光イメージングには、脂質二分子膜形成プロトコルの最適化、電極表面修飾プロトコルの最適化、発光試薬濃度の検討、電圧印加とシャッタータイミングの正確な同期など検討すべき項目が多岐に渡っている。脂質二分子膜上の小胞の挙動などが一部見えてきているものの、再現性のある測定系を構築するには、上記の課題を解決していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質二分子膜上の小胞の挙動などが一部見えてきているので、再現性を確認するとともに、得られる電流情報と発光情報の正確な紐づけが行えるよう、周辺装置のカスタマイズを行う。電気化学インピーダンス測定法や原子間力顕微鏡を用いて、電気化学発光イメージングで得られている結果との電気的特性・膜表面形状などとの整合性を取ることを進める。 またDOPC以外のリン脂質や、コレステロールなどを含む脂質二分子膜についても評価を進める。 年度後半には生きている細胞由来の膜小胞と、平面脂質二分子膜の相互作用に関して検討を進める。
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Causes of Carryover |
移管により顕微鏡レンズを譲っていただけたため、その分の費用を次年度に繰越すこととする。脂質やモデルエクソソームは単価が高いため、次年度は繰越費用をこれら生体分子のバリエーションを増やすことに充て、研究の展開先を広げることを目指す。
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