2022 Fiscal Year Research-status Report
13族元素0価化学種の創出と元素トランスファー反応への展開
Project/Area Number |
22K20561
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
太田 圭 近畿大学, 理工学部, 助教 (40963971)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 典型元素 / 低配位化学種 / 立体保護基 / 分子変換 / 無機材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来にない「13族元素0価単原子」"E(0)"(E = B, Al, Ga, In)を創出し、ビルディングブロックとして用いることで有機合成化学や無機材料科学に展開することを目的とする。"E(0)"は、その高い反応性から未知の部分が多く仮想分子とされてきた。本研究では、「縮環型立体保護基(Rind基)」を有する「ジアリールテトリレン」(Rind)2M: (M = Si, Ge, Sn, Pb)を新たに補助配位子として活用することで、未知の"E(0)"の実現化に取り組む。また「元素トランスファー反応」の探求を通して、分子変換技術の開発やマテリアルズサイエンスの新展開にアプローチする。令和4年度は、かさ高い「縮環型立体保護基(Rind 基)」と種々のハロゲン化ホウ素BX3 (X = F, Cl, Br)との反応を検討し、「ゲルミレンホウ素付加体」の研究を行った。「ジアリールゲルミレン」と三臭化ホウ素との反応では、「ジブロモゲルマン」が生成したことを各種解析により決定した。一方で三塩化ホウ素を用いた場合には、ゲルマニウム-ホウ素結合を有する「ゲルミレンホウ素付加体」である「ボラクロロゲルマン」の生成を示唆する実験結果を得た。また、「ジアリールゲルミレン」と「トリアリールホウ素化合物」 R3B (R = C6H5, C6F5)との反応を検討し、「ゲルマニウム-ホウ素付加体」を生成し、「ジアリールゲルミレン」の配位能について調査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
13族元素0価単原子を合成する上で鍵となる、「縮環型立体保護基(Rind基)」を有する「ジアリールテトリレン」(Rind)2M: (M = Si, Ge, Sn, Pb)の合成法を確立している。また、「ジアリールゲルミレン」と種々のハロゲン化ホウ素との反応を検討した。Eindを有するジアリールゲルミレンと三臭化ホウ素との反応では、ゲルマニウム中心が酸化された「ジブロモゲルメン」が生成したことをNMR測定とX線結晶構造解析により決定した。一方で三塩化ホウ素を用いた場合には、ゲルマニウム-ホウ素結合を有する「ゲルミレンホウ素付加体」である「ボラクロロゲルマン」の生成を示唆する実験結果を得ており、「(2) おおむね順調に進展している。」を選択した。合成した「ボラクロロゲルマン」と「ジアリールゲルミレン」、還元剤との反応により、ジアリールゲルミレンによって安定化されたホウ素の0価単原子への変換も期待できる状況である。 また、「ジアリールゲルミレン」の配位能について調査するため「ジアリールゲルミレン」と「トリアリールホウ素化合物」 R3B (R = C6H5, C6F5)との反応を検討し、「ゲルマニウム-ホウ素付加体」の生成を示唆する結果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に引き続き、令和5年度においても、種々の「ジアリールテトリレン」を用いて、ハロゲン化ホウ素との反応を精査することにより、「テトリレンホウ素付加体」の合成法を確立する計画である。合成した「テトリレンホウ素付加体」に「ジアリールテトリレン」を加え、カリウムグラファイト(KC8)などの種々の還元剤との反応について調査し、ホウ素の0価単原子の初合成にアプローチする方針である。生成物の分子構造を単結晶X線構造解析により決定するとともに、電子物性について理論計算によって明らかとする予定である。
|
Causes of Carryover |
当初の計画よりも順調に進展した研究内容、および、展開が遅れている研究内容があり、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、次年度使用額が発生しまし た。当初の研究計画の見直しや修正を行うことで、翌年度分として請求した助成金と合わせて、試薬や器具の購入費等で適切に使用する計画です。
|