2022 Fiscal Year Research-status Report
天然物生合成機構の改変による革新的ペプチド-核酸融合化合物ライブラリーの構築
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22K20567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白石 太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40734603)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 核酸系化合物 / 放線菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、核酸-ペプチド融合化合物創出系構築の基盤を確立するため、ペプチド構造を含む小タンパク質の放線菌における発現系の構築を試みた。最初に生産菌である放線菌を宿主として用いてヒスチジンタグを付加した酵素の発現系を構築し、Ni-NTAカラムによる精製を試みた。しかしながら目的タンパク質を得ることはできなかった。そこで次に汎用宿主であるS. lividans TK23株を用いた発現系の構築を行なった。構築した異種発現株を用いて発現条件検討を行い、目的タンパク質の精製を試みた。その結果、目的とする小タンパク質の良好な取得に成功した。今後は異種発現宿主を用いて改変生合成系の再構築を行う。 また各種組換え酵素とペプチダーゼを用いたin vitro反応を試みた結果、目的とする核酸-ペプチド融合化合物と一致する分子量と思われる化合物の形成を確認した。このことから少なくともin vitroでは計画した合成系が有効に働くことが示された。また、これら組換え酵素と小タンパク質の変異体を用いて縮合反応の検証を行なった。その結果、本縮合反応においては小タンパク質のC末端部位の鎖長に対してはある程度の寛容であることが明らかとなった。一方で、一部の高度に保存されているC末端の酸性アミノ酸残基について変異を導入すると全く活性が損なわれることが明らかとなった。 本研究で対象としている核酸とペプチドの縮合反応を触媒する酵素の構造生物学的知見を得るために各種条件による結晶化を試みた。小タンパク質との共発現系を用いて精製した複合体や各種単体酵素を用いて結晶化スクリーニングを行なったものの、現在までに良質な結晶の取得には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生産菌を宿主とした発現系の検証では、発現系がうまく働かず当初の計画通りにの結果は得られなかった。しかしながら宿主を扱い易い異種放線菌に変更したことにより、良好な組替えタンパク質の取得に成功した。今後は生産菌ではなく異種放線菌を用いることで生産系の構築を行う。そのために対象とする核酸化合物の異種生産系を構築する必要があるものの、すでに本化合物の類縁化合物については異種生産の報告があるため支障はないと推測される。一方で試験管内再構成実験に関しては計画通りの反応の進行を検出することができた。また変異導入実験についてもある程度の成果を得ている。今後はさらに変異酵素の解析を進める予定である。また鍵酵素の構造解析については、結晶を得られていないものの構造予測による推定構造を得ることはできた。以上、計画通り進展しなかった部分もあったものの、個々の課題については解決あるいは解決されつつあり、一定の成果は得られていることからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
生産系の構築に関して、当初の予定していた生産菌を用いた系では目的タンパク質の精製に至らなかったものの、宿主を放線菌S. lividansに変更することで良好な精製に成功した。今後はこのS. lividansを宿主として生産系の構築を試みる。そのためにまず核酸系抗生物質の異種発現系の構築を行う予定である。これまでにこのウリジン含有化合物の異種生産についてはS. lividansの類縁種であるS. coelicolorで報告があることから、この発現系をもとに異種発現株の構築を行う予定である。 一方で試験管内再構成系による検証は順調に進行している。今後はさらなる基質特異性の検証を行う予定である。構造解析については引続き結晶化スクリーニングを行うと共に、AlphaFold2などの構造予測ツールとドッキングシュミレーションの利用により機能改変のための知見の獲得を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
生産系での発現系の構築が難航したために、計画していた分取カラムなどの化合物の分析および単離精製のための各種実験器具について購入を見送った。計画を変更して異種発現系で進めることとしたため、準びが整い次第、計画通りの購入を行う予定である。
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