2022 Fiscal Year Research-status Report
硝化抑制物質ブラキアラクトンの詳細な構造活性相関研究による単純化アナログの創出
Project/Area Number |
22K20571
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮坂 忠親 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80961630)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ブラキアラクトン / 硝化抑制 / 天然物合成 / 構造活性相関 / 有機合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代農業では、農地に多量投入されたアンモニア態窒素肥料が土壌細菌により硝化(アンモニアから硝酸へ酸化)されることで、温室効果ガス排出や水質汚染など深刻な環境問題を引き起こしている。この課題に対し、過剰の硝化を適切に制御する方法が強く求められている。ブラキアラクトンは、2009年に熱帯牧草から単離された強力な硝化抑制物質であるが、天然から単離された類縁体は3種のみであり、どの部分が活性発現に重要であるのか明らかになってはいない。そこで、本研究ではブラキアラクトン類縁体の系統的合成法の開発と構造活性相関研究による構造単純化アナログの分子設計を行うことを目的とした。 本年度は、合成計画に従って、ブラキアラクトンのC環に相当するフラグメントの合成を行った。当初の予定通り、A環フラグメントとのカップリング反応に向けて、C環フラグメントのアルケンのブロモ化を検討したが、望む位置とは逆の位置でブロモ化が進行した。そこで、合成計画を修正し、C環フラグメントから7員環と5員環を順次構築する戦略に切り替えた。その後、鍵反応である8員環構築を検討する予定とした。 すなわち、合成したC環フラグメントから数段階の反応を経て調製した基質に対し、安藤試薬を用いた増炭反応により不飽和エステルとした。続くエステルの加水分解反応と、生じたカルボン酸のジアゾ化によりジアゾケトンを合成した。現在、分子内シクロプロパン化による7員環の構築を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、ブラキアラクトンのC環に相当するフラグメントの合成を検討した。はじめは計画した通り、既知化合物のアルケンのブロモ化により望むブロモ化体を得ようと考えたが、望む位置と反対の部分がブロモ化された化合物が主生成物として得られた。そこで、C環に相当する部分からシクロプロパンと7員環を一挙に構築し、その後A環に相当する5員環を構築する戦略に修正した。 現在、C環に相当する化合物から、安藤試薬を用いた増炭反応などを経て、7員環構築の前駆体となるジアゾケトンを低収率で合成した。 予想外の反応が生じ、合成計画を修正したため、当初の予定よりも少し遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、合成したジアゾケトンを用いた分子内シクロプロパン化により、シクロプロパンを持つ7員環を一挙に構築する。その後、A環を構築し、生合成を模倣したシクロプロパンの環拡大反応により、8員環を構築し、ブラキアラクトンの炭素骨格を形成する。続く官能基の変換反応によりブラキアラクトンの全合成を目指す。 ブラキアラクトンの合成法を確立でき次第、類縁体合成に着手し、順次硝化抑制活性を評価する予定である。
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