2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K20575
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
小島 新二郎 国立感染症研究所, 治療薬・ワクチン開発研究センター, 研究員 (60967793)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / 薬剤耐性菌 / ファージ療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、抗生物質の効かない薬剤耐性菌による死亡者数が増加しており、世界的な問題となっている。これまでに、抗菌薬治療に代わる治療方法 として、細菌を特異的に殺菌するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を用いたファージ療法の開発が試みられている。しかし、現在 のファージ療法の技術では患者に感染した細菌を殺滅できないことがファージ療法の最大の障壁となっている。この障壁を取り払うためには、 治療に必要な高い殺菌力を持つファージの確保が重要である。そこで本研究では、大腸菌を用いたランダムミュータジェネシスの手法を用いて、 高効率殺菌ファージ(キラーファージ)を構築し、治療効果の高いファージ療法の実用化を目指している。ファージに迅速かつ容易にランダムな変異を導入するため、遺伝子修復に関わる3種類の遺伝子(mutS, mutD, mutT)を欠損させた大腸菌を用いて野生ファージの変異株取得を試みる「ファージ育種」を行った。その結果、親株と比較して顕著な殺菌力の向上が認められるファージを作製することに成功した。作製した変異ファージの全ゲノム解析を行った結果、細菌を溶菌する際に機能するファージ固有の遺伝子に変異が確認された。現在このファージを用いて、臨床由来の薬剤耐性大腸菌に対してもこの強い殺菌力を発揮するか検証を進めている。また、このファージの変異が確認された遺伝子の欠損株作製のため、ファージ合成技術を用いた欠損株作製を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに殺菌力が向上したファージ株の取得およびゲノムのシーケンス解析による変異部位の特定まで進めることができた。 現在、殺菌力向上に寄与した変異遺伝子の欠損株の作製を行うために、当該ファージ株においてファージ合成技術を用いるための条件検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で用いるファージにおけるファージ合成技術の確立のため、本合成技術が成功しているファージで合成効率を向上させるための条件検討を行う。 所属研究室が保有している臨床由来の薬剤耐性大腸菌を用いて、当該変異ファージが強い殺菌力を発揮するか検証を進める。 上記検証実験においても有意な殺菌力向上が確認された後、当該変異ファージ(当該遺伝子欠損ファージの合成が成功していたら合成ファージ)を薬剤耐性大腸菌感染マウスに投与するマウス感染実験を行い、治療効果を検証する。
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Causes of Carryover |
3月16日から18日に開催された第96回日本細菌学会への参加費等の清算が年度内に完了せず持ち越しとなった。 当該年度に予定していた外注による解析を次年度に行うことになったため、次年度使用額として計上する予定である。
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