2023 Fiscal Year Annual Research Report
水田土壌中のヒ素動態に関与する微生物群集構造と機能遺伝子の解析
Project/Area Number |
22K20587
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
伊藤 虹児 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 研究員 (70828863)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 異化的ヒ酸還元酵素遺伝子 / 水田土壌 / 鉄還元細菌 / 硫酸還元細菌 / ヒ素 / 黒ボク土 / メタトランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌微生物によるヒ素(As)代謝はAsの生物地球化学的循環を駆動し、ひいてはコメのヒ素汚染レベルに影響を及ぼす。しかしながら、このプロセスの鍵となる微生物は日本の水田土壌中で殆ど明らかとなっていない。本研究では国内のAs非汚染土壌を嫌気的に培養し、そこから抽出・精製したmRNAを用いたメタトランスクリプトームによるAs代謝遺伝子(arrA, ttrA, arsM)の発現解析を行なった。 我々は最初に黒ボク土からのRNA抽出条件の検討を行った。その結果、市販の土壌RNA抽出キット(RNeasy PowerSoil Total RNA kit)とカゼインナトリウムの組み合わせによって、total RNAを高濃度、高純度で抽出できることを見出した。次にNGSで解読された大量のショートリードからAs代謝遺伝子を特異的に検出するため、gene-targeted assembler (MegaGTA)を実装した。 上記のRNA抽出法および解析法を組み合わせた結果、培養した水田土壌中で発現するAs代謝遺伝子のうち異化的ヒ酸還元酵素遺伝子として、arrAよりもttrAの発現量が多かったことから、当該遺伝子がAsの還元溶解に関与していることが示唆された。主なttrAの発現宿主は土壌ごとに異なったものの、鉄、或いは硫黄還元細菌として知られるグループがAs還元溶解の鍵となる微生物であることが示唆された。さらに、多様な微生物がarsMを発現していることが明らかとなり、その発現量が3日目から9日目にかけて5 ~ 13.2倍に増加することが示された。これらの結果は国内の水田においてAsの生物地球化学的循環を駆動する微生物の指標を与えるものであり、将来的にコメのヒ素汚染リスクを予測する上で有用な情報になることが期待される。
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