2023 Fiscal Year Annual Research Report
電気泳動堆積現象を用いた省エネルギーかつ高速なバイオナノファイバー濃縮技術の開発
Project/Area Number |
22K20592
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
春日 貴章 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (40915584)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 脱水 / 電気泳動堆積 / 電着 / 電気浸透 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロースナノファイバー(CNF)は高機能かつ持続可能なナノ繊維だが、製造工程上水を多量に含んだ水分散液の状態を出発原料として利用する必要がある。加えてCNFは水との親和性が高いため脱水に多大なエネルギー及び時間が必要であり、フィルムや乾燥体、樹脂複合材製造に向けた脱水工程の効率化が求められている。本研究では、CNFの電気泳動堆積現象に着目した新規脱水技術の開発に取り組んだ。電気泳動堆積による脱水効率の測定に適した専用セルの設計、開発を行い、脱水効率を評価した。0.2 wt%のTEMPO酸化CNF/水分散液をターゲットとして印加電圧10 Vで脱水を行った場合、1時間後には固形分濃度 約1.6 wt%の濃縮CNFハイドロゲルを得ることができた。この際、脱水に必要な消費エネルギーは極僅かであり、蒸発乾燥によって脱水自他場合と比較して300分の1程度であった。また、印加電圧の上昇に伴い、得られる濃縮CNFハイドロゲルの固形分濃度は上昇した。但し、5 V以上の高電圧で電極上にセルロースナノファイバーを堆積させた際、濃縮後のCNFはほぼ完全にプロトン化しており、陽極近傍の水の電気分解による酸性化の影響が確認された。次に、濃縮CNFハイドロゲルの再利用性について評価を行った。濃縮CNFハイドロゲルに蒸留水を加えて希釈・攪拌し、乾燥させたところ、透明CNFフィルムが得られた。但し、脱水工程を経ない場合と比較して、ヘイズが僅かに悪化した。これは、陽極上でのプロトン化による凝集による再分散性の低下が原因と考えられた。そこで、濃縮CNFハイドロゲルに対してNaOH水溶液による中和処理を行ったところ、再分散性が回復し、高透明・低へイズフィルムを得ることができた。これらの結果から、電気泳動堆積による脱水は、本来脱水が困難な孤立分散CNF/水分散液の新規脱水手法として有望であることが示唆された。
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