2023 Fiscal Year Annual Research Report
既設階段式魚道改良のための小型通し回遊魚が遡上困難となる流れ場の解明
Project/Area Number |
22K20598
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
矢田谷 健一 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (70949487)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 魚道 / 河川環境 / 通し回遊魚 / 小型魚 / 模型実験 / 多自然川づくり / 自然環境 / 水理実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、遊泳能力が弱い小型通し回遊魚(ニホンウナギやウキゴリ類、カジカ属等)を主とする多様な魚種が遡上可能となる既設魚道の低コストな局部改良の技術開発を目指している。本研究は、そのスタートとして、大型模型水路(長さ5.5m、幅1.4m、高さ1.4m)を作成し、実寸大相当の階段式魚道隔壁部(隔壁厚30cm、隔壁高64cm)を対象として越流水深15cm、20cmの条件で遡上実験を行い、小型通し回遊魚が遡上困難となる階段式魚道越流部の水理条件の解明を試みた。 最終年度に実施した研究の成果は以下のとおりである。 ①河川遡上期のウキゴリ類(平均標準体長3.9cm)を対象に遡上実験を行った。プール間水位差Δh=10cmの条件では、越流部の遡上を試みたウキゴリ類のうち90%以上が遡上に成功した。一方,Δh=15cmの条件では、魚が越流水脈に進入する際の流速が160cm/s以上となり、プールの静穏域から水脈への進入時にバランスを崩して流下する個体が多数観察され、遡上成功率が50%程度となった。②ニホンウナギ(平均標準体長15.3cm)を対象に遡上実験を行った。プール間水位差Δh=15cmの条件では、越流部の遡上を試みる個体はいるものの、遡上成功率0%となった。一方、Δh=5cmの条件では、70%以上の個体が遡上に成功した。 上記に加え、期間全体を通して、次の成果を得た。 ③河川遡上期の標準体長2cm台のカジカ小卵型を対象とした遊泳実験を行い、70cm/s以上の流速では全く前進できないことを明らかにした。さらに、流速50cm/s以下の流れ場であれば、一般的な魚道隔壁厚に相当する30cmまで前進できる個体が半数以上となることがわかった。 本研究によって得られた成果は、遡上弱者である小型通し回遊魚に配慮した魚道設計にあたって有益な知見となることが期待される。
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