2023 Fiscal Year Annual Research Report
オス減数分裂における性染色体に特異的なDNA損傷応答を司る分子基盤の解明
Project/Area Number |
22K20635
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阿部 洋典 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (20914964)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 精子形成 / 減数分裂 / DNA損傷応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の減数分裂では性染色体の遺伝子発現パターンに顕著な性差が観察される。オスでは減数第一分裂前期のある時期を境に性染色体からの遺伝子発現が停止し、このステータスは減数分裂完了まで維持される(性染色体不活性化)。性染色体不活性化は精子形成の完了に必須の重要な現象であるにもかかわらず、その制御機構には不明な点が多い。これまでに遺伝子不活化の長期的な維持には性染色体上における活性型のDNA損傷応答シグナルが必須であることが報告されているが、性染色体という限られた場で活性型シグナルを維持させる分子メカニズムは謎である。染色体ワイドなDNA損傷応答シグナルはオスの減数分裂でしか観察されず、そこには減数分裂特異的な制御機構の存在が予想される。本研究ではDNA損傷応答シグナルの上流キナーゼであるATRを減数分裂期の性染色体上にリクルートする機構が存在すると仮説を立て、その因子の同定を試みた。 本研究ではATRと複合体を形成するATRIPに着目し、ATR-ATRIPと相互作用する因子の同定を計画した。昨年度はCIRSPR/Cas9を用いてATRIPのN末側に3xFLAG-HAタグを導入したマウスを作成したが、得られたノックインヘテロマウスに腫瘍が形成され、マウスコロニー樹立に至らなかった。本年度ではATRIPのC末側にHA-3xFLAGを導入したマウスを新たに作成した。同マウスのノックインホモはオスメス共に妊孕性を維持しており、腫瘍の発生などの明らかな異常はこれまで観察されていない。現在、共免疫沈降と質量分析によるATRIP相互作用因子の網羅的同定を目的とした実験が進行中である。当初の研究計画に遅れが生じたが、本研究によって減数分裂特異的なATR-ATRIP制御因子の発見が期待されるだけでなく、DNA損傷応答シグナルの研究分野全体に有益なマウスツールを開発することができた。
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