2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K20639
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
大野 速雄 日本女子大学, 理学部, 講師 (00747272)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 胚発生 / エピジェネティクス / 表現型可塑性 / 線虫 / 動物-微生物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは最近になって、分子生物学における優れたモデル生物である線虫Caenorhabditis elegansの母親が有害腸内微生物を経験すると、子の内胚葉細胞が過剰分裂して胚発生が左右非対称に変化し、この変化が生殖能力の維持に寄与することを発見した。本研究は、このエピジェネティックな胚発生様式の切り替え現象(選択的胚発生)について、遺伝学的解析を中心とした分子メカニズムの解析を行った。本研究では、研究期間内に主に下記のような成果が得られた。 (1) 化学変異原(エチルメタンスルホン酸)を用いた順遺伝学的スクリーニングにより、有害微生物の非存在下でも胚発生様式が変化するような変異体を単離することに成功し、安定した表現型を示すことを確認した。これらの変異体について、責任遺伝子同定の準備を進めている。 (2) 選択的胚発生をより効果的に検出するための網羅的な実験系の条件検討を行い、微生物に暴露する温度などの条件が選択的胚発生の検出に重要である可能性が見出された。 (3) 発生中の胚において分子局在や細胞内構造を高感度に観察できる蛍光顕微鏡システムを構築した。 (4) 様々な変異体を用いた逆遺伝学的解析により、あるリソソーム関連遺伝子の変異体では胚発生変化が亢進することを発見した。時期・細胞特異的レスキュー実験により、この遺伝子が機能する時期・場所を明らかにしていく。 立ち上げたばかりの研究室でスムーズに研究・教育環境を整備することができており、これからも本研究での成果をもとにして、この現象のメカニズムを分子レベル・細胞レベルで解明することを目指して研究を進めていく。
|