2023 Fiscal Year Research-status Report
自己創生するProtocellでのゲノムDNAの高次構造と機能
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22K20640
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西尾 天志 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (70964138)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | DNA高次構造 / 遺伝子発現活性 / 水性二相系 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリエチレングリコール(PEG)とデキストラン(DEX)の水性二相系による微笑液滴を用いた細胞モデルの構築を進めた。研究を進める中で、PEG/DEX液滴に内包する長鎖DNAが高濃度となる時、イオン条件に応じてDNAの高次構造や空間配置が変化することによって、非球形の液滴が創出されるといった、予想外に興味深い結果が得られたため、これに注力した研究を行った。これについて、実験と理論の両面から研究を推進し、液的の粘弾性といった材料特性について定量的な評価を行った。 同時に、細胞モデル構築後に細胞モデル内外の場の条件を変化させるファクターの候補探索として、in vitro実験系での予備的な実験も引き続き進め、抗がん剤を用いた研究から、予想外に興味深い以下の結果が得られたため、こちらにも注力して研究を行った。 ポリアミン(スペルミン)によって、遺伝子発現活性を様々に制御した条件下で、無細胞系遺伝子発現に対する抗がん剤ダウノマイシン(DM)の作用を調べた。その結果、低濃度DM存在下での弱い発現促進と、DM濃度依存的に引き起こされる発現の抑制という二相性の効果が観察された。さらに、原子間力顕微鏡により、ゲノムサイズDNAの高次構造に対するDMの作用を調べたところ、DM低濃度ではDNAの伸張を引き起こし、一方、高濃度ではスペルミンによって形成されたFlower-like structureを破壊することが明らかにした。DMが引き起こすDNA高次構造あるいは二重鎖切断によって遺伝子発現活性が影響を受けるという本研究成果は、従来の研究では知られることの無かった、DMのDNAへの直接的な作用を明らかにした新規性の高いものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PEG/DEX液滴に無細胞系遺伝子発現系を実装する過程で、長鎖DNAを高濃度に内包させた際に、液滴内において一分子レベルでDNAを観察した場合とは異なる、興味深い結果が得られ、その究明を進めたため。 また、細胞モデル構築後に細胞モデル内外の場の条件を変化させるファクターとして用いる候補について、in vitro実験系での予備的な実験を進めた結果、in vitroの 実験においても当初想定していた以上に興味深い結果が得られ、それらの究明を進めたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、PEG/DEX液滴系およびin vitro実験系の両方で予想外に興味深い結果が多く得られた。そのため、今後の研究の推進方策として、得られた成果の国際論文誌への投稿を進める。同時に、これらの研究成果を、細胞モデルを用いた実験系と組み合わせて新しい研究を展開していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
所属研究室にて、使用試薬のストックが想定したより多く残っていたため。 研究成果発表のため、追加実験に必要な消耗品購入、論文投稿の投稿費、オープンアクセス費用、英文校閲費用、学会発表にかかる費用として使用する。
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