2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K20641
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
川口 隆之 基礎生物学研究所, クロマチン制御研究部門, 助教 (40947727)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ゾウリムシ / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
単細胞真核生物のゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)は、異なる性の個体が接合する一般的な有性生殖に加えて、単一細胞内で有性生殖を完結させるオートガミーと呼ばれる特殊な有性生殖様式を有する。本年度は、オートガミーの開始機構の解明を目指して以下の研究を遂行した。 研究代表者は予備的な実験から、1) オートガミーの過程でDNAアデニンのメチル化修飾(6mA)が減数分裂期の小核に蓄積していること、2) DNAアデニンのメチル化酵素(MET)をコードする遺伝子をノックダウンした細胞では、通常の接合による有性生殖を行えるのに対して、オートガミーは開始できないことを見出していた。さらに、オートガミーの開始に関連する因子を同定するために、METのノックダウン細胞のトランスクリプトーム解析を予備的な実験として行っていた。本年度はトランスクリプトーム解析から得た知見を元に、野生型細胞でオートガミー過程の初期に発現しているのに対し、METのノックダウン細胞では発現が上昇してない遺伝子に着目し、RNAiによってそれらの遺伝子に対してそれぞれノックダウンを試み、MET存在下でオートガミーの開始が阻害されるかを検討した。その結果、それらの遺伝子の中から、ノックダウンすることによってオートガミーの開始に影響を与える遺伝子を見出すことに成功した。さらに、この遺伝子はノックダウンしても栄養状態での生育に影響は見られないため、オートガミーの進行に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートガミーの開始を制御する分子機構はこれまでに明らかにされてきていなかったが、本研究ではオートガミーの開始に関与する因子を同定することに成功した。したがって、今後その因子や6mAの分子機構をさらに詳細に解析することによって、オートガミーの開始機構への理解が飛躍的に進むと期待できると評価したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もオートガミーの開始の制御機構の解明を目指し引き続き研究を遂行していく。本年度に同定した遺伝子については、発現解析等の詳細な解析を行う。また最近、DNAインジェクション法のセットアップが完了したため、METをノックダウンすることによりオートガミーを阻害した細胞にDNAインジェクション法によって本年度に同定した遺伝子を導入し、オートガミーの誘導が可能であるかの可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
旅費については、コロナ禍の状況を考慮し、本年度の参加をできるだけ控えた。したがってその費用を次年度の学会参加費として使用する計画である。物品費については、ゾウリムシの培養に使う培地に問題が生じ、ゾウリムシの維持が困難であった期間があり、予定していた6mA結合因子の解析の進捗状況に遅延が生じてしまった。そのため、その解析に必要な試薬等の購入を見送った。次年度では、その試薬等を購入する予定である。
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