2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K20665
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
孫田 佳奈 富山県立大学, 工学部, 助教 (10963415)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 光環境適応 / 柵状組織細胞 / 自然選択 / エコゲノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は複数地点において平行進化したダイモンジソウの光生態型(強光および弱光下に生育する明所型と暗所型)を対象として、弱光適応をもたらす遺伝的基盤の解明を試みた。まず、ナノポアシーケンサーを用いてロングリードDNA配列を取得し参照ゲノムの構築を試みた。その結果、720Mbp(n=11)のゲノムが274本のコンティグにまとまり,遺伝子網羅率を示すBUSCO値も98.7%と高い値を示した.次に、光生態型間で分化した遺伝領域をゲノムワイドに探索するために、Pool-seq法によるDNAシーケンスを行った。その結果、新潟県の光生態型間では特に大きく分化する遺伝領域が見つからなかったものの、秋田県の光生態型間では大きく分化する遺伝領域が特定された。そこでその領域内に座乗する遺伝子の機能をBLAST検索により調べたが、葉の光形態形成に関与すると考えられる遺伝子の特定には至らなかった。その理由の1つには、Pool-seqにより得られた配列が参照配列に上手くマッピングできなかった可能性が考えられた。参照配列の作成には個体内のヘテロ接合度が低い東京都の集団に由来する個体を用いた。しかし、対象種のダイモンジソウには日本列島の南北に対応して遺伝的に分化した2系統が存在しており、参照配列とした東京都の集団(南)と新潟県・秋田県の集団(北)の間では当初に想定していたよりも大きな遺伝的分化が生じていたために参照配列へのマッピングが上手く行われなかった可能性が考えられた。今後は北集団でもドラフトゲノムを構築する必要があることがわかった。加えて、塩基置換を伴う遺伝変異だけではなく発現遺伝子の違いによって生じる可塑性の影響も考慮し、光生態型間の形質値分化をもたらす遺伝的基盤を解明していく必要があることもわかった。
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