2022 Fiscal Year Research-status Report
反応抑制を制御する霊長類ドーパミン神経回路基盤の解明:光技術を用いたアプローチ
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22K20676
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
王 亜偉 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (40959128)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 反応抑制 / ドーパミン / 光遺伝学 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は変化し続ける環境において、望ましくない結果を生じる行動を抑制することが求められる。この「反応抑制」と呼ばれる認知機能には、運動制御を担う大脳皮質-大脳基底核ループ回路が重要な役割を果たすことが知られている。ドーパミン神経系はこのループ回路の機能を支える主要な構成要素であるが、ドーパミン神経系がどのようなメカニズムで反応抑制を制御しているのか、また、ドーパミン神経系の活動と反応抑制の能力との因果関係は不明である。 本研究では、大脳皮質-大脳基底核ループ回路の中でドーパミン入力を受け取る線条体に注目し、イメージング技術と光遺伝学技術を用い、反応抑制が求められた際に線条体に入力されるドーパミンシグナルを同定し、このドーパミンシグナルと反応抑制の能力との因果関係をヒトに近縁なマカクザルを用いて明らかにする。この問いに答えるために、本研究では以下の2つの実験を計画している。実験①:ドーパミン入力を受け取るマカクザルの線条体に注目し、反応抑制が求められた際に線条体に入力されるドーパミンシグナルをイメージング技術によって計測する。実験②:各線条体サブ領域に入力されるそのドーパミンシグナルと反応抑制の能力の間に因果関係があるのかを光遺伝学によって解析する。 初年度では、1頭目のサルの課題訓練を完了させた。また、課題に関連する脳領域である線条体を同定し、ターゲット脳領域にウイルスベクター注入を行い、ドーパミンイメージング実験の記録を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画開始の初年度では、実験遂行に必要な装置の整備を完了した。そして、一頭目のサルの電気生理実験を行い、本研究に注目する線条体脳領域から神経活動を計測し、ターゲット領域の同定を行った。また、各線条体サブ領域にウイルスベクター(AAV2.1CaMKIIα-dLight1.1)を注入した。その後、サルの行動課題の成績はウイルス注入の行いによって、低下したため、課題の再訓練を行った。現在一頭目のサルから課題遂行中に線条体サブ領域に入力されるドーパミンシグナルの計測を行い、おおむね順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
線条体におけるドーパミンイメージング実験について、stop signal課題を遂行中に各線条体サブ領域に入力されるドーパミンシグナルを計測し続ける。本研究はドーパミンシグナルと反応抑制能力の間の因果関係を明らかにすることを目的とする。そのため、反応抑制の能力に関連するstop signalの呈示遅延のパラメータを調整しながら、一頭目の動物から実験データの収集を進めて行く。また、課題遂行中に反応抑制が求められた際、記録した予備データをstop signalの呈示遅延の条件ごとに解析し、計測したドーパミンシグナルを比較する。さらに、各線条体サブ領域の反応抑制に関連したドーパミンシグナルが入力されているのかを同定する予定である。
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Causes of Carryover |
計画通り研究を遂行したが、消耗品が予定より少なく済んだため、次年度使用額が生じた。 2023年度、ドーパミンイメージング実験に必要な電極、光ファイバーの購入に充当する予定である。
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