2023 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類高次視覚野に実装された動き処理と錯視に関わる神経回路の解明
Project/Area Number |
22K20678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 昂之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10965742)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | MT/MST / マーモセット / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、視覚的な動き情報処理を担う大脳皮質MT/MST野の局所神経回路の演算が、運動残効と呼ばれる動きの錯視を生じさせるメカニズムを解明することである。運動残効とは、動く視覚刺激を数十秒間観察した後で静止画を見ると、静止画が直前まで観察していた動きと逆向きに動いて知覚される錯視である。ヒト脳機能イメージングの研究から、ヒトやサルにおける動き情報処理の中枢であるMT/MST野が運動残効に重要であることが示唆されているが、運動残効の神経回路メカニズムは不明である。本研究では、非ヒト霊長類であるマーモセットMT/MST野のin vivoカルシウムイメージングを用いて、特に予測的情報処理という観点から、運動残効を引き起こす神経回路メカニズムを調べた。まず、アデノ随伴ウイルスベクターをMT/MST野にインジェクションし、広域カルシウムイメージングを用いてMT/MST野を同定した。次に、二光子カルシウムイメージングと運動残効を引き起こす20秒間の動き刺激を用いて、MT/MST野の神経細胞集団の活動を観察した。細胞集団活動の解析結果から、MT/MST野の神経活動パターンはおおよそ3種類に分類できることがわかった。さらに、これらの3種類の神経活動は、予測符号化モデルのシミュレーションから推定した、感覚情報・予測・予測誤差シグナルを符号化する3種類の神経活動とよく似ていることが分かった。さらに、予測誤差シグナルを符号化する神経活動が運動残効に対応することがわかった。これらの結果から、運動残効が、MT/MST野の3種類の神経活動が担う予測的な動き情報処理によって引き起こされる可能性が示唆された。
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