2022 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病のαシヌクレイン伝播におけるカルシウムダイナミクスの重要性
Project/Area Number |
22K20683
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 潤 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (40762539)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | パーキンソン病 / アルファシヌクレイン / カルシウムダイナミクス / 伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、パーキンソン病におけるアルファシヌクレイン凝集体伝播へのカルシウムダイナミクスの関与について明らかにすることである。 2022年度は、まずpHrodo色素で標識したアルファシヌクレインフィブリルを初代培養神経細胞に加えることで、神経細胞に取り込まれたアルファシヌクレインフィブリルが細胞内で発色して観察できる実験系に対してカルシウムダイナミクスを標的とする薬剤としてカルシウムキレート剤、カルシウムチャネル阻害薬、カルモジュリン阻害薬、カルシニューリン阻害薬を投与して、アルファシヌクレインフィブリルの取り込みにカルシウムダイナミクスが関与していることを明らかにした。 さらにアルファシヌクレインフィブリルの取り込みには特にマクロピノサイトーシスというエンドサイトーシス の一種が関与しているが、マクロピノサイトーシスのマーカーを投与した初代培養神経細胞に、前述のようなカルシウムダイナミクスを標的とする薬剤を投与することで、マクロピノサイトーシスにカルシウムダイナミクスが関与していることを確認した。 これまでの研究ではアルファシヌクレイン凝集体伝播とカルシウムダイナミクスの関連性については報告されておらず、また神経細胞において神経活動依存性にアルファシヌクレイン凝集体伝播が起こる機序についても不明な点が多いため、これらの点を明らかにしたことは学術的独自性が高いと言える。また本研究の成果はパーキンソン病の病態におけるカルシウムダイナミクスの関与の解明、ひいては新たな治療ターゲットの探求を通じて疾患修飾療法の開発に繋がることが期待され、臨床応用という観点での創造性を有している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は当初の研究計画に従って研究を進めることができ、また概ね想定された通りの結果を得ることが出来たため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は培養細胞とマイクロ流体デバイスを用いてアルファシヌクレインフィブリルの順行性および逆行性軸索輸送を評価する実験系を確立し、この実験系に対してカルシウムダイナミクスを標的とする薬剤を投与することで、カルシウムダイナミクスがアルファシヌクレインフィブリルの軸索輸送に関与しているか確認する予定である。この実験系の確立が困難な場合は、脳組織切片を用いた免疫組織染色等により軸索内におけるアルファシヌクレインの検出を検討する予定である。 さらに定位脳固定装置でマウス脳にアルファシヌクレインフィブリルを投与するとアルファシヌクレイン凝集体が形成される(マウスパーキンソン病モデル)。野生型マウス(各群N=5)を用いたパーキンソン病モデルに対して、カルシウムチャネル遮断薬などのカルシウムダイナミクスを標的とする薬剤を投与して、培養細胞を用いた実験結果と合致する結果が得られるか確認する予定である。また、脳内移行性がみられる薬剤を選択し、本動物モデルにおける予防および治療効果についても検証する予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究で使用する試薬の納入が2022年度内に間に合わなかったため、次年度に購入することになったことにより次年度使用額が生じた。
|