2022 Fiscal Year Research-status Report
TDP-43変異導入ヒトiPS細胞由来ニューロンを用いた筋萎縮性側索硬化症の病態解明
Project/Area Number |
22K20696
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
恩田 亜沙子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20961890)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / iPS細胞 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが障害される予後不良な疾患である.ALSの発症機序には諸説あるが,申請者はALSの多くで共通してみられる神経細胞内封入体の構成タンパクであるTDP-43に着目した.本研究は,ヒトの細胞を用いてALSにおけるTDP-43変異の影響を解析するため,まず健常人由来ヒトiPS細胞にTDP-43変異を導入し,次にこの細胞株から分化誘導したニューロンで,ALSとの関連が想定される因子(ニューロンの形態,TDP-43の局在変化や封入体形成,細胞死,TDP-43のスプライシング機能など)を解析し,TDP-43に起因するALS発症機序を明らかにすることを目的とする. まず, 健常ヒトiPS細胞に①健常配列②TDP-43変異配列(A382T)をCRISPR CAS9遺伝子編集技術により導入し,①野生型細胞株②A382T変異細胞株を樹立した.遺伝子編集をしていないコントロール細胞株,野生型細胞株,A382T変異細胞株から運動,感覚ニューロンを分化誘導を行った.上記ニューロンの形態や機能評価を行ったが3群で差はみられなかった.これはALSが発症までに長い年月を要することを反映している可能性がある.in vitroで臨床経過を忠実に再現することは困難であるが,臨床に則したストレス負荷により細胞死を引き起こすモデルニューロンの作製が望まれる.今後酸化ストレス負荷によりニューロンの脆弱性に差がみられるか検証を行う.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子未編集iPS細胞と遺伝子編集により樹立したiPS細胞(WT株,A382T株)の3ラインを用いて,運動神経,感覚神経へ分化誘導を行った.運動神経,感覚神経ともに3群でニューロンの細胞体,軸索,樹状突起などの形態に差はみられなかった.ALS患者においてTDP-43の局在が核から細胞質に変化すること,細胞質でTDP-43が凝集体を形成することが指摘されているが,本研究の培養ニューロンの免疫染色ではTDP-43の局在は核にあり,凝集体形成は確認できなかった.3群で運動ニューロンのマーカー陽性率,感覚ニューロンのマーカー陽性率に有意差はみられず,運動ニューロン,感覚ニューロンにおいてTDP-43のRNA量に有意差はみられなかった. また,TDP-43はRNA結合タンパク質であり,自分自身や他の遺伝子のスプライシングに関与している.TDP-43の選択的スプライシングの標的としてPDP1,BCL2Lなどが知られており,TDP-43の機能が低下すると,PDP1はあるエクソンを含む割合(PDP1-L/PDP1-S)が増え,BCL2Lはあるエクソンを含む割合(BCL2L-L/BCL2L-S)が減ることが報告されている.本研究において,運動ニューロン,感覚ニューロンの上記TDP-43の選択的スプライシング機能を評価したが,TDP-43の機能低下は示されず,3群で有意差はみられなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
2か月間の培養では疾患群での差はみられず,酸化ストレス負荷でニューロンの脆弱性に差がみられるか評価を行う.適切なストレス負荷条件を検討し,上記ニューロンの形態や機能評価を再度行う予定である.
|
Causes of Carryover |
今年度は既存の試薬を用いながら研究を遂行することができた. 次年度は論文投稿,学会発表やさらなるニューロンの解析を行う予定である.
|