2022 Fiscal Year Research-status Report
髄腔内投与により到達しづらい脳深部を標的とする、高比重の核酸医薬化合物の創出
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22K20708
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大原 正裕 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (30964936)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / 核酸医薬 / 中枢神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
高比重の溶媒を核酸医薬と髄腔内から共投与し、その後頭位を低くすることで脳内での遺伝子抑制効果が向上することをマウス・ラットを用いて再現性を持って確認した。さらに、低頭位にさせる際、仰臥位または腹臥位のいずれが優れているかを評価したところ、有意な遺伝子抑制効果の差異はみられなかったが、脳の部位によって優れた効果をもたらす傾向のある体位があることが示唆されたしかし、比重の異なる二種類の溶媒を核酸医薬と共投与したが、比重による遺伝子抑制効果の明らかな差異は見出せなかった。 そこで、前述の有効性向上が、薬剤のデリバリーの改善ではなく、高比重の薬剤による浸透圧の変化により脳への薬剤移行が変化した可能性を考え、マウスへの脳室内投与でアンチセンス核酸と高比重の溶媒の共投与の効果を検討した。しかし、アンチセンス核酸単体と比較して、アンチセンス核酸+高比重化合物では有効性は変化がなかった。そのため、髄腔内投与での有効性向上は、確かに高比重化合物による頭部へのデリバリー改善によるものであることを示すことができたと考えている。 また、高比重化合物を髄腔内に投与することによる毒性についても検討を行った。投与直後~投与7日後まで明らかな行動異常などの中枢毒性を認めず、また組織学的にも異常所見はみられなかった。現時点では安全なドラッグデリバリーシステムであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究のコンセプトである、高比重化合物による中枢神経への有効性の向上という点に関しては、再現性がえられ、また脳室内投与では有効性が改善しないことから確かにデリバリーの向上による有効性向上であることを示すことができた。しかし、異なる比重の化合物で有効性の違いが見出せなかったことから、最適な高比重化合物を見出すには至っていない。また、そのため、核酸と高比重化合物を共有結合させた新規化合物の合成はできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
髄腔内投与したのち、頭位を低位としているが、その持続時間がデリバリー・有効性の向上に影響を与えている可能性がある。臨床においては髄液穿刺後は30分~1時間仰臥位を保つことが多いため、同程度の低頭位時間を目安に、時間による影響を評価する。 高比重化合物については、現在使用している物質とは異なる高比重化合物についても、その有効性を評価する。核酸医薬に直接共有結合可能な物質が見出されたら、共有結合させた新規化合物の薬効も評価する。
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Causes of Carryover |
当初核酸の合成、特に高比重化合物を核酸に直接共有結合させた化合物の合成を検討していた。しかし、最適な高比重化合物を見出せていないことから、合成に至っておらず、そのため次年度使用額が発生した。
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