2022 Fiscal Year Research-status Report
高感度質量分析法の開発に基づく1細胞アミノ酸メタボロミクスへの挑戦
Project/Area Number |
22K20718
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
古庄 仰 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (20964943)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 1細胞分析 / アミノ酸 / メタボロミクス / 誘導体化 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん組織は不均一で、周辺環境によって代謝が変化することが知られている。そのため、代謝変動の詳細な解析には細胞1個レベルでの測定が望まれる。本研究では、がん細胞におけるアミノ酸メタボロミクスを1細胞レベルで実現することを目指して、誘導体化と質量分析を用いた高感度1細胞分析法の開発を行う。2022年度は、細胞を採取するガラスキャピラリー内での誘導体化に適した試薬および反応条件、分析条件を検討した。ガラスキャピラリーは容積が数十マイクロリットル程度で、誘導体化後に質量分析計で直接測定するため、微小空間での高い反応性と質量分析計での高感度な検出を両立する試薬の選定が必須であった。 数種のアミノ酸誘導体化試薬を検討した結果、数マイクロリットルの溶液中でアミノ酸と反応し、エレクトロスプレーイオン化で高効率にイオン化されて質量分析計で高感度に検出される試薬を見出した。誘導体化反応については反応温度、反応時間、反応液のpH等をさらに検討し、簡便かつ迅速な反応手順を構築した。質量分析には三連四重極型質量分析計を採用し、誘導体化試薬に由来する特徴的なプロダクトイオンを用いたMS/MS分析により、誘導体化アミノ酸の高感度かつ選択的な検出を実現した。 開発した手法をヒト肝がん由来細胞の分析に適用した結果、細胞内の微量アミノ酸を検出することに成功した。また、同一の誘導体化試薬を用いてLC-MS/MS分析法を構築し、大量細胞から調製した抽出液を測定した。得られたアミノ酸プロファイルは1細胞の測定結果と類似しており、開発した1細胞分析法を用いて細胞内のアミノ酸含量を評価可能であることが示された。さらに、同一の条件で培養した複数個の細胞をそれぞれ測定した結果、細胞間で含量の大きく異なるアミノ酸が存在し、1細胞レベルでの差異解析が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、誘導体化試薬の比較検討と高感度分析法の開発を予定していた。計画通り、複数種の試薬について検討を行い、細胞を採取した微小ガラスキャピラリー内でのアミノ酸誘導体化反応に適した試薬を見出した。また、反応条件や検出条件を最適化して、細胞内微量アミノ酸の高感度検出に成功した。 さらに、LC-MS/MSを用いた大量細胞抽出液の分析系を構築したことで、1細胞分析で得られた結果の評価や細胞集団の不均一性についての解析が可能となった。 以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した分析法を用いてヒト正常細胞とがん細胞を測定し、アミノ酸含量の比較を行う。また、数種のがんについては悪性化とアミノ酸代謝変動の関連が指摘されており、これらのモデル細胞を用いてがん種ごとのアミノ酸プロファイルを解明する。さらに細胞周期ごとの代謝変動やアミノ酸代謝阻害剤による経時変化等についても解析を試み、がん細胞において特徴的な変動を示すアミノ酸を探索する。
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Causes of Carryover |
2022年度に購入を予定していた物品のうち、世界情勢に伴う流通の乱れから入手困難な品目があり、物品費の執行額が予算を下回った。それらの試薬、器具等に関しては2023年度に購入を計画している。
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