2022 Fiscal Year Research-status Report
熱ショックタンパク質の制御に基づく天然由来医薬シーズの探索とがん再発予防への応用
Project/Area Number |
22K20720
|
Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
今堀 大輔 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 助教 (10963556)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 熱ショックタンパク質 / がん予防 / 天然物化学 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、抗がん剤抵抗性の原因分子の一つである熱ショックタンパク質(HSP)を標的とする天然由来医薬シーズの探索およびがん再発予防薬の提案である。HPSは様々のがんにおいて高発現しており、抗がん剤によるアポトーシスを抑制することで抗がん剤抵抗性に関与していると考えられている。そのため様々な阻害剤が開発されてきたが、がん細胞増殖抑制試験において単独では毒性を示さないHSP105 阻害剤の開発研究は、ほとんどおこなわれていない。そこで、本研究では既存の抗がん剤との併用による抗がん剤感受性増強作用を指標とした活性評価を行うことで、高活性成分の探索を行う。さらに、得られた化合物についてHSP105の発現および局在制御を評価し、がんモデル動物での有効性を明らかにする。 本年度は、沖縄県産オオハマボウ(Hibiscus tiliaceus) 幹および枝部について含有成分の探索を行った。その結果、1種の新規クマリン配糖体を含む、10種の既知化合物を得ることができた。新規成分の化学構造はNMRおよびMSを始めとする各種物理化学的データの解析により決定した.次に、得られた化合物について、ライブセルイメージング解析によるアドリアマイシン(ADR)誘発アポトーシス様細胞死を指標とした抗がん剤感受性増強作用評価を行った。その結果、既知成分であるseguinoside Kが、化合物単独では子宮頸がん細胞株HeLaの細胞増殖および細胞形態に影響を与えることなく、ADRによるアポトーシス様の細胞死を有意に増強することが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沖縄県産オオハマボウ(Hibiscus tiliaceus) 幹および枝部より、1種の新規クマリン配糖体を含む、10種の既知化合物を得ることができた。また、抗がん剤感受性増強作用評価を行ったところ、既知成分であるseguinoside Kが、化合物単独では子宮頸がん細胞株HeLaの細胞増殖および細胞形態に影響を与えることなく、ADRによるアポトーシス様の細胞死を有意に増強することが明らかになった。 活性成分が得られたことから、今後、HSP105の発現および局在制御、がんモデル動物での有効性の評価を行うことが可能となった。そのため、研究計画のとおり、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度得ることができた成分について、HSP105の発現および局在制御、がんモデル動物での有効性の評価を行う。すなわち、HSP105 発現制御はウエスタンブロッティング解析により明らかにする。局在制御についてはEGFP-HSP105/HeLa S3 細胞におけるライブセルイメージング解析を用いた時空間的動態の観察により評価する。これによって、HSP105発現および局在制御に影響を与える化合物を見出すとともに、候補となる標的タンパク質を絞り込む。見出した化合物について、磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイにより、標的タンパク質の同定を行う。さらに、重度複合免疫不全マウスにがん細胞株を皮下投与したがんモデルマウスを用い、抗がん剤感受性増強作用の評価を行う。これらのことより、HSP105 阻害剤の抗がん剤抵抗性改善薬としての有用性を明らかにし、がん再発予防に貢献できる化合物の提案を目指す。 さらに、抗がん剤感受性増強作用を有する新たな化合物の単離を目的とし、他の植物においても、含有成分の探索を継続して行う。
|