2023 Fiscal Year Research-status Report
ニコチンおよび新型タバコ成分による精巣機能障害とCOPD発症・病態進展との関連
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22K20729
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
青野 健太郎 福岡大学, 薬学部, 研究員 (30967724)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | COPD / ニコチン / エラスターゼ / 精巣 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要 慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は性ホルモンの分泌が減少する40代以降、罹患率が増加する。また、COPD患者の血清テストステロン濃度は健常者と比較して減少することが明らかとなっている。申請者らは近年、精巣摘出によりテストステロンを減少させたマウスにエラスターゼによる肺気腫を誘発すると、モデルマウスの肺気腫形成が増悪することを明らかとした。これらの知見はテストステロンの減少が肺気腫形成を促進する可能性を示唆している。 テストステロンの約90%は精巣のライディッヒ細胞で産生されるが、最近の研究においてニコチンはライディッヒ細胞数および血清テストステロン濃度を減少させることが報告された。その一方で、ニコチンはテストステロンの代謝酵素である3α-HSDを阻害するため、ニコチンはテストステロンの産生と代謝に2面的な役割を有すると推測される。本研究課題では、タバコ含有成分が内分泌系およびCOPDの病態進展に与える影響とその関連性を明らかとする。 本年度はC57BL/6Jマウスに長期間の低用量および高用量のニコチンの飲水投与を行った。ニコチン摂取量依存的に血清テストステロン濃度は増加した。さらに、ニコチン投与マウスにエラスターゼによる肺気腫を誘発し、COPDモデルマウスを作製した。モデルマウスについて精巣および肺組織の形態学的評価を実施した。ニコチン投与マウスの精巣のライディッヒ細胞数はニコチン摂取量に応じて減少した。また、高用量ニコチン投与COPDモデルマウスの平均肺胞径および肺の膠原線維面積は、コントロールのマウスと比較して有意に増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、所属大学の方針で一時的に研究活動を縮小したことが理由である。また、学部生のカリキュラムがコロナによって変更となったことで、協力を依頼していた学部生が実験に参加することが難しくなった。そのため、日程の調整などで時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
長期ニコチン摂取および豚膵エラスターゼ(Porcine Pancreatic Elastase: PPE)誘発肺気腫モデルマウスにおいて、肺気腫の形成が加速し、肺組織における膠原線維が増加する結果を得た。ニコチンが膠原線維を増加させたメカニズムは不明であるため、肺組織についてTGF-βなどの遺伝子の発現評価を実施する。 解析と並行して、長期ニコチン摂取およびPPE誘発肺気腫モデルマウスについてモデル作成を行い、急性炎症期における評価を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナによる研究活動の縮小によって研究が遅延したため、計画通りに資金を使用できなかった。延長した研究期間における動物購入や必要試薬の購入に未使用額を使用して実験を行う。
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