2022 Fiscal Year Research-status Report
心房細動に対するイソラムネチンの抑制効果と作用機序の解明
Project/Area Number |
22K20732
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
青沼 和宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 産総研特別研究員 (30965554)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | イソラムネチン / 心房細動 |
Outline of Annual Research Achievements |
野生型雄性マウス(C57BL/6J、8週齢)を(1)コントロール群、(2)アンギオテンシンII投与群、(3)アンギオテンシンII+イソラムネチン投与群の3群にランダムに振り分けた。アンギオテンシンII投与群、アンギオテンシンII+イソラムネチン投与群は、アンギオテンシンII(1000ng/kg/分)を植込み型浸透圧ポンプを用いて2週間連続投与し、アンギオテンシンII+イソラムネチン投与群は、アンギオテンシンII投与開始1週間前にイソラムネチン(5mg/kg)を計3週間腹腔内投与した。 実験内容として、経静脈電極カテーテルを用いた心房細動の誘発実験と電気生理学的実験、単離心筋を用いたCa2+イメージング実験を行った。また心房の線維化を定量化するため、マッソントリクローム染色を実施した。 心房細動誘発実験において、コントロール群と比較して、心房細動誘発率はアンギオテンシンII投与群で顕著に増加し、イソラムネチンを投与することでアンギオテンシンIIによる誘発率の増加が有意に減少した。また心房細動持続時間もアンギオテンシンII投与群で顕著に延長し、イソラムネチンを投与することでアンギオテンシンIIによる心房細動持続時間の延長が有意に短縮した。心房有効不応期(BCL=150msec)は、アンギオテンシンII投与により短縮し、イソラムネチンを投与することで心房有効不応期の短縮が回復した。アンギオテンシンII投与群では拡張期の細胞内Ca2+活動異常(筋小胞体上に存在するリアノジンII受容体からのCa2+漏出)が認められたが、イソラムネチンを投与することでCa2+活動異常は減少した。マッソントリクローム染色において、アンギオテンシンIIは心房組織の線維化を亢進させ、イソラムネチンはアンギオテンシンII投与による心房組織の線維化を強く抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イソラムネチンのアンギオテンシンII誘発性心房細動発症抑制における有効性を実証することができた。さらにイソラムネチンが心房細動発症に関わる細胞内のCa2+活動異常、心房組織の線維化を抑制し、心房細動発症に関連する電気的リモデリング、構造的リモデリングを抑制できることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの心房組織を用いた1細胞RNA-seqの結果などを応用して、イソラムネチンの心房細動発症抑制作用における、作用機序の解明、ターゲット分子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
国際学会で成果発表を行う予定だったが、国際的な情勢などを考慮し、今年度は参加できなかったため、未使用額が生じた。未使用額は、今年開催される国際学会にて演題が採択されたため、この国際学会で発表する際に使用する予定である。
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