2022 Fiscal Year Research-status Report
シスプラチン難聴の克服を目指した新規予防戦略の創出
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22K20739
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若井 恵里 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40964896)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | シスプラチン / 難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
白金製剤であるシスプラチンは、様々な悪性腫瘍に有効な抗がん薬である。しかし、不可逆性の内耳聴覚障害が惹起され、患者の生活の質を著しく損なう。特に小児では、難聴は言語の発達にも影響するため、深刻である。治療薬としてステロイドやビタミンB12が使用されるが、その効果の十分なエビデンスはなく、現在有効な治療法はない。そこで本研究では、大規模医療データベースによる網羅的分析からシスプラチン難聴の保護薬となりうる既存承認薬を同定することを目標とする。 本年度は、大規模医療データベースから、シスプラチン難聴の保護薬となりうる既存承認薬を同定した。 さらに、シスプラチンをマウスに投与後、聴性脳幹反応(ABR)テストを実施し、シスプラチン難聴モデルを作成した。 ABRの結果、シスプラチン投与により32kHzの高音領域の聴力の低下が認められた。この結果は、これまで報告されているシスプラチン難聴モデルと同程度の難聴であり、シスプラチン難聴モデルとして妥当であると考えられる。さらに、蝸牛を内耳から取り出し、ホールマウント染色を用いてファロイジンおよびミオシン6抗体にて内耳蝸牛の有毛細胞の脱落率を比較した。その結果、内有毛細胞の脱落は認められなかった。一方で外有毛細胞については、シスプラチン投与マウスで軽度であるが脱落が認められた。今後、同定した新規保護薬の効果について検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大規模データベースよりシスプラチン難聴の保護薬を同定しているが、ABR装置の導入に時間を要したため遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
①ABRを用いた聴力テストおよびホールマウント免疫染色 ②内リンパ直流電位(EP)の測定などの電気生理実験 ③Pt蓄積量の測定 今後上記実験を実施し、シスプラチン難聴の新規保護薬の効果を検討することで難聴克服の実現を目指す。
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Causes of Carryover |
装置導入が遅れたため、動物実験の開始に遅れが生じたため。動物実験に関与する予算を次年度に繰越、実施する。
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