2022 Fiscal Year Research-status Report
2つの細胞極性の制御から明らかにする血流を介した新しい血管新生機構
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22K20743
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
花田 保之 宮崎大学, 医学部, 助教 (80964965)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 血管新生 / 細胞極性 / 細胞運動 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
血管新生は、既存の血管から新しい血管が出芽し、伸長して新たな血管網が形成される現象である。この現象においては、内皮細胞の移動により新生血管が伸長するのと並行して、血管内腔が形成される。このとき、内皮細胞の前後軸方向および頂底軸方向の細胞極性が出現し、現象が進行するが、これら2つの極性形成がどのように統合されているかは、明らかになっていない。血管壁は、血流に起因する圧力を常に受けるが、この血管内圧が内腔形成を促進することがすでに報告されている。一方で、研究代表者らは、血管内圧が、血管壁伸展を感知するメカノセンサー分子を介して内皮細胞の移動を抑制し、血管新生における血管伸長を抑制する現象を見出した。以上のことから、2つの細胞極性の制御が、血流圧刺激を介して制御されている可能性が考えられた。本研究では、2つの細胞極性のマーカー分子を見出し、独自の血管新生オンチップモデル上で、それらの分子をリアルタイム可視化することで、極性の時空間的ダイナミクスを明らかにする。また、メカノセンサー分子のダイナミクスと極性形成の時空間的相関を明らかにすることによって、極性制御のメカニズムを明らかにする。現時点で、血管新生における内皮細胞の前後軸および頂底軸のマーカーとなりうる分子種を見出し、さらにこれら分子の動態が、血管周囲細胞であるペリサイトによって変化を受けることがわかってきた。また、現象への力学的な介入を行い、血管周囲基質の硬さの変化が、血管新生動態に影響を与えることも明らかになってきた。これらの結果から、前後軸・頂底軸という2つの細胞極性がペリサイトおよび血管周囲の力学的性質を介して連関している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として挙げていた、2つの細胞極性のマーカー分子候補の検討を行った。血管新生オンチップモデルおよび新生仔マウス網膜の血管の免疫染色像から、前後軸のマーカーとして、ゴルジ体およびArp2/3複合体用いることが可能であることを見出した。一方で、血管周囲細胞であるペリサイトが、血管内腔を細く保ちつつ伸長を促進する現象が明らかになり、2つの細胞極性制御のメカニズムを検討する上で有用な摂動因子である可能性が示唆された。頂底軸のマーカーとして基底膜成分および内腔局在分子を候補として検討しており、その一部はマーカーとして用いることができる可能性が明らかになってきている。また、力学的な因子が介在する可能性の検討として、血管周囲基質を人工的に硬くすることによって血管新生オンチップモデル上で血管新生を再現することを試み、このとき内腔が細く保たれながら血管伸長が促進することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで明らかになった前後軸および頂底軸の分子マーカーおよびメカノセンサー分子をレポーターとした内皮細胞の樹立を、予定通り推進中である。今後は、樹立した細胞を用いて、血管新生オンチップモデル上での血管新生をリアルタイム可視化する実験系を構築し、得られたデータから、本研究の目的である、2つの細胞極性の時空間的ダイナミクスを解析する予定である。また上記の通り、血管周囲細胞であるペリサイトが、これらの極性形成に何らかの変化を加えて、血管新生そのものを制御している可能性が示唆されている。このことから、ペリサイト共在下での、同様のリアルタイムイメージングおよび解析を行い、ペリサイトの血管新生における役割を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は、微小流体デバイスを用いた細胞極性の分子マーカーの探索を行ってきたが、次年度からは、その結果をもとに、レポーター内皮細胞の樹立のための物品費として支出予定である。また、学会参加費も支出予定である。
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