2022 Fiscal Year Research-status Report
コカイン依存が長期化するメカニズムの解明: Egr1に着目して
Project/Area Number |
22K20749
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中村 有香里 久留米大学, 医学部, 助教 (10446106)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | コカイン / 側坐核 |
Outline of Annual Research Achievements |
コカインなどの依存性薬物は少数のニューロンを同時に活性化し、その結びつきを病的に強めることで長期の依存性をもたらすと考えられているが、実際に脳内のどの部位の、どのような神経細胞が活性化されるのかはわかっていない。本研究では、マウスにおける薬物依存の長期化現象(コカイン感作、コカイン条件付け場所嗜好性)における線条体の各脳神経細胞の細胞型(D1ニューロン、D2ニューロン)や活性化細胞の役割を検討した。活性化細胞のマーカーとしてEgr1を用いた。まず、コカイン条件付け場所嗜好性テスト(コカインCPP)における線条体各細胞型(D1ニューロン、D2ニューロン)の機能を明らかにするために、2種類の遺伝子改変マウス(D1Cre x R26-LSL-Gi-DREADD、A2ACre x R26-LSL-Gi-DREADD)を用いて、コカイン投与時にD1もしくはD2ニューロンの活動性を抑制した時、コカインCPPが阻害されるかどうか検討をおこなった。その結果、D1もしくはD2ニューロンのどちらの活動性を抑制した場合にもコカインCPPの形成が阻害された。以上の結果から、D1ニューロンとD2ニューロン、それぞれのニューロンの活性化がともにコカインCPPの形成に必要であることが示唆された。今後は、脳のどの領域のD1ニューロンとD2ニューロンがコカインCPPの形成に重要なのか解析するため、特定の細胞型にCreを発現する遺伝子改変マウス(D1Cre mice, D2Cre mice)に、Cre依存的に抑制型DREADDを発現するAAVを各脳部位に注入し、DREADD発現細胞の活動性を抑制したときのマウスの行動を解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたEgr1CreERT2 miceを用いた実験において、標識したEgr1発現細胞の活性化を抑制しても薬物依存の長期化現象の形成は阻害されなかった。Egr1KOマウスでは薬物依存の長期化現象の形成が阻害されることから、この結果は予想外の結果であった。原因としては、Egr1CreERT2 miceのニューロンにおいて標識されるのに必要なEgr1発現の閾値が高すぎたため、目的とするEgr1発現細胞を十分に標識できなかったためだと考えられる。このため、当初の計画を変更し、Egr1のshRNA-AAVを注入することにより、脳の各部位のEgr1発現を抑制することで、薬物依存の長期化現象形成における脳各部位のEgr1の役割を検討することとした。以上の経過から、当初の計画よりやや遅れた進捗状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
Egr1のshRNA-AAVを注入し、脳の各部位のEgr1発現を抑制することで、薬物依存の長期化現象(コカイン感作、コカイン条件付け場所嗜好性)形成における脳各部位のEgr1の役割を検討する。また、脳の特定の細胞型にCreを発現する遺伝子改変マウス(D1Cre mice, D2Cre mice)を用い、Cre依存的に抑制型DREADDを発現するAAVを注入し、リガンド投与によってDREADD発現ニューロンの活動性を抑制することで、脳のどの領域のD1ニューロンとD2ニューロンがコカインCPPの形成に重要なのか解析していく。
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Causes of Carryover |
これまでの実験に使用した遺伝子改変マウスはすでに所属研究室や共同研究先の研究室で保有しているものであり、本年度は新たにマウスを購入する必要がなかった。また、所属研究室や共同研究先の研究室で購入済みの試薬やウイルスを、本実験においても使用可能であった。そのため、試薬・ウイルス購入とマウス購入の予定金額が残り、次年度へ繰り越しとなった。また、Egr1CreERT2マウスを用いた行動実験の結果が想定外のものであったため、その後に予定していた実験に使用する予定の試薬、ウイルス等の購入を持ち越したため、次年度使用額が発生してしまった。今後、本年度の追実験、遅れている実験、次年度に行う予定の実験の費用として使用する予定である。さらに、本研究の成果発表を次年度に予定しており、その費用としても使用予定である。
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