2022 Fiscal Year Research-status Report
肝臓門脈域に局在する免疫制御性マクロファージの生理・病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
22K20760
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 佑 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任研究員(常勤) (90965336)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 肝臓 / 門脈域 / マクロファージ / 免疫制御 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究者はこれまでに、肝臓内の門脈域に免疫制御性マクロファージが局在していることを発見したが、このマクロファージが門脈域に局在する生理的な意義については不明であった。この免疫制御性マクロファージは腸内細菌に応答して発生してくることを見出していたため、体内に侵入してきた腸内細菌に対する生体防御と組織恒常性の維持を担っているのではないかと考えた。そこで、このマクロファージの抗炎症機能を欠失させた遺伝子改変マウスとコントロールの野生型マウスに1%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水を飲ませて腸管バリアを破壊し、侵入してきた腸内細菌に対する肝臓内での炎症反応を評価した。その結果、遺伝子改変マウスでは野生型よりも多くの炎症性好中球の浸潤がみられた。さらに長期にわたり腸炎を誘導すると、遺伝子改変マウスでは著しい肝障害と門脈周辺の線維化が生じた。以上の結果から、門脈域の免疫制御性マクロファージは侵入してきた腸内細菌に対して過度な免疫応答を引き起こさないように免疫系を調節して組織の恒常性を維持していることが示唆された。 さらに、本研究者が使用している2つの動物飼育施設間で肝臓門脈域の免疫制御性マクロファージの数が有意に異なることを見出していたため、各施設のマウスの糞便をメタゲノム解析することで本マクロファージを誘導する腸内細菌の同定を試みた。この結果、本マクロファージが多い施設で有意に多く存在する腸内細菌を5種類に絞り込むことができた。さらに、この中でも特に本マクロファージの数と高い正の相関を示す腸内細菌の菌株をこの細菌を持たないマウスに経口移植したところ、本マクロファージの誘導能が認められた。次年度は、この腸内細菌がどのような分子メカニズムで門脈域の免疫制御性マクロファージを誘導しているのかを明らかにする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である、肝臓門脈域の免疫制御性マクロファージの生理的役割の解明と本マクロファージを発生誘導する腸内細菌の同定を達成できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
肝臓門脈域の免疫制御性マクロファージの病態生理学的意義をさらに深く理解するため、様々な肝疾患モデル(脂肪肝炎、自己免疫性肝炎など)を活用し、それぞれの病態との関係性を明らかにする。すなわち、このマクロファージがどの疾患においては抑制的に働き、どの疾患においては病態進行を促進するように働くのかを明らかにする。さらに、本マクロファージを誘導する腸内細菌が同定できたので、次は具体的にどのような分子メカニズムでこの免疫制御性マクロファージを誘導しているのかを詳細に解明する。
|
Causes of Carryover |
試薬を新たに購入する予定であったが、所属研究室で既に購入されていた試薬を使用したため、その分の費用が節約できた。また実験内容を一部変更したことで、当初使用する予定だった解析費用が浮いた。前年度に節約できた分を次年度の大規模な実験・解析に充てる。
|