2023 Fiscal Year Annual Research Report
細胞接着因子Saaの腸管出血性大腸菌感染症の重症化への寄与及び病原性機構の解明
Project/Area Number |
22K20766
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
窪村 亜希子 国立感染症研究所, 細菌第一部, 研究員 (40947967)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / 細胞付着 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した312株の腸管出血性大腸菌(EHEC)の全ゲノム配列(WGS)解析により検出した90株のsaa保有株のWGSデータを用いて解析を行い、saa保有EHEC株の集団感染事例として国外で報告されている血清型であるO113:H21のEHEC株の78.4%がsaaを保有していることが確認され、一方でOX18:H19(87.5%)やOX21:H19(81.8%)の血清型においても高率でsaaを保有していることも判明した。また90株のうち、溶血性尿毒症症候群 (HUS)患者であった8株についてロングリードシークエンスを取得することで完全長配列の決定を行い、これらゲノム配列を用いて論文化も行った。さらに、完全長配列データを用いて、細胞付着性を示すHUS患者由来株が保有するsaaが存在するプラスミドを特定し、抽出した当該プラスミドを非病原性大腸菌株(DH10B)へ導入した株を作製および当該プラスミド導入株について培養細胞を用いた付着性の解析を行った結果、細胞に非付着性であった。本解析結果からHUS患者由来株がsaa以外で、さらに当該プラスミド以外の部分に存在する未特定の付着因子をにより細胞付着性を示していたことが明らかとなった。この未特定の付着因子はHUS患者由来株の細胞付着性を担っていることから、当該付着因子はEHEC感染症の重症化に寄与している可能性が示唆されるため、研究計画を変更して当該付着因子特定に向けてTn-seq解析を行った。Tn-seqにより取得したシークエンスデータと完全長配列を用いて解析を行った結果、染色体上に存在する約4500種類遺伝子から付着に寄与している可能性が高い遺伝子を30種類抽出することに成功した。これら30遺伝子に着目して解析を継続していくことでEHEC感染症の重症化に関与する可能性のある新規付着因子が特定される可能性があると考えれる。
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