2022 Fiscal Year Research-status Report
COVID-19重症化を予防する中和活性レベルの特定とワクチン接種計画への展開
Project/Area Number |
22K20768
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
川筋 仁史 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (40957916)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | COVID-19 / 2価ワクチン / 中和活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
武漢株によるパンデミック初期では、発症早期の中和抗体誘導が重症患者で遅延していることを確認しており(Kawasuji, Sci Rep 2021)、ワクチン接種者においても中和活性低下が発症や重症化と関連していると想定された。しかし、オミクロン株(BA.1系統)流行期に発症5日以内に入院したCOVID-19患者を対象に、ワクチン2回接種後に感染したワクチン接種者群とワクチン未接種者群に分け、液性免疫として中和活性、細胞性免疫として末梢血濾胞性ヘルパーT細胞を評価したところ、パンデミック初期の結果とは異なり、いずれも重症患者で有意に高い結果が見出され、迅速な液性免疫応答と重症病態とに関連性が認められた。さらに、オミクロン株(BA.5系統)流行期以降は、COVID-19による肺炎を呈する患者はほぼ認められず、誤嚥性肺炎を合併した高齢者が患者集団の多くを占めていた。以上から、COVID-19自体による重症化を予防しうる中和活性レベルの推定が難しい状況となった。 一方、ワクチン評価においては、当院スタッフの協力を得て、2価ワクチン4回目接種(Kawasuji, Microbiol Spectr 2023)の免疫原性・安全性を評価し、迅速な成果公開を行なった。また、当院スタッフのワクチン接種後抗体追跡調査において、3回目接種以降にCOVID-19に感染した感染者は、感染しなかった非感染者に比べて、感染前の抗体量および中和活性が有意に低いことを確認し、抗体量、中和活性と実社会における感染防御能との関連性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19による肺炎自体で重症化する患者は、一部のワクチン未接種者や免疫不全患者を除いてほぼ認められなくなり、高齢者では誤嚥性肺炎等の合併もあるため、重症化に関する正確な評価が難しくなったが、ワクチン接種後に感染した感染者の感染前の抗体量および中和活性が非感染者に比べて有意に低く、抗体量、中和活性と実社会における感染防御能との関連性を示すデータは、感染を予防しうる中和活性レベルの推定のために大変有用な情報となり得ると考えられる。 また、2価(BA.1対応)ワクチン4回目接種(Kawasuji, Microbiol Spectr 2023)の免疫原性・安全性を迅速に評価した報告は、臨床試験を除き、実臨床においては世界に先駆けての報告となり、日本人のエビデンスとして迅速な成果公開に繋げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、既に約4人に1人が感染したことのある既感染者となっている日本において、感染後に4回目ワクチン接種を受けた既感染者と、感染の既往がない中、4回目接種を受けた未感染者において、4回目ワクチン接種で得られる抗体量、中和活性を3カ月後まで評価した。今後も引き続き、長期的な推移について追跡調査を続けていく予定である。 感染者と非感染者における感染前中和活性レベルの違いから、感染を予防しうる中和活性レベルの推定に取り組むとともに、既感染者と未感染者に分けたワクチン接種計画の立案を取り組む。また、現在までに得られた知見をまとめ、論文化を行う。
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