2022 Fiscal Year Research-status Report
3D培養にて検証したEBウイルス陽性リンパ腫細胞に対するアルギニンの抗腫瘍効果
Project/Area Number |
22K20769
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
能島 舞 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20961783)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | アルギニン / リンパ腫 / 三次元培養 / EBウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
EBウイルス非関連リンパ腫細胞株(FL18)をアルギニン添加培地および非添加培地で浮遊状態で培養したところ、アルギニン添加により細胞増殖が抑制され、さらにアルギニン濃度依存的である傾向がみられた。この意義、重要性について以下のように考える。すなわち、アルギニン投与には「腫瘍促進効果」と「腫瘍抑制効果」があり、「腫瘍の種類」「腫瘍細胞におけるアルギニン合成遺伝子の発現の有無」「腫瘍微小環境の状態」「個体の免疫細胞と腫瘍細胞との関連性」によってその効果が変わることが報告されており、今回の結果から、FL18リンパ腫細胞株においてはアルギニン投与が「腫瘍抑制効果」を示すと推測される。今後は免疫染色やメタボローム解析等により、FL18リンパ腫細胞株のアルギニン代謝の状態について検討する。 また、FL18リンパ腫細胞株を三次元培養したところ、特定の条件下で増殖する傾向がみられた。三次元培養は、通常の浮遊状態での培養と比較してより生体に近い状態での培養法と考えられている。したがってアルギニン代謝状態も生体内の状態をより反映していると推測される。今後は三次元培養の最適な培養条件を決定するとともに、浮遊状態での培養と同様にアルギニン添加によりFL18リンパ腫細胞株の増殖が抑制されるか検討する。 以上より、現時点では「EBウイルス非関連リンパ腫細胞株(FL18)において、アルギニン投与により細胞増殖が抑制される傾向にある」ことが解明された。EBウイルス関連リンパ腫細胞株(FL18EB)も安定した培養が得られており、今後、FL18EBリンパ腫細胞株においてもアルギニン添加および非添加培地で浮遊状態での培養と三次元培養を行い、EBウイルス感染下での細胞増殖の変化をみる。そしてFL18リンパ腫細胞株のデータと比較することで、EBウイルス感染の有無がアルギニン代謝に及ぼす影響について考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リンパ腫細胞株は浮遊状態での培養が一般的であり、今回取り組んだ三次元培養に関して、最適な培養方法、培養条件の決定にやや時間を要している。また、三次元培養後の検体の取り扱い(ホルマリン固定バラフィン包埋標本の作成等)に技術を要し、その修得にやや時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
浮遊状態での培養で、EBウイルス非関連リンパ腫細胞株(FL18)においてアルギニン投与により細胞増殖が抑制される傾向にあることがわかった。リンパ腫細胞の最適な三次元培養法の確立に時間を要す場合は、浮遊状態での培養で得られた検体でのアルギニン代謝状態の検討(メタボローム解析等)を先行して行う。 EBウイルス関連リンパ腫細胞株(FL18EB)についても同時に解析を進める。
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Causes of Carryover |
研究計画にやや遅れを生じたことにより、今後必要となる物品が未購入であるため。 今後は技術の習得等により研究計画に沿って進むことが推測されるため、翌年度分と合わせて順次使用する予定である。
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