2023 Fiscal Year Annual Research Report
シスプラチン耐性分子メカニズムに着目した新規免疫療法
Project/Area Number |
22K20777
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
水江 由佳 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20464480)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | がん免疫 / 抗体医薬 / 人工抗体 / がん抗原 / 尿路上皮癌 / 化学療法抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
シスプラチン(CDDP)をはじめとするプラチナ製剤に対する耐性は,がん患者生命予後に大きく関わる.泌尿器系悪性腫瘍中で致死率の高い尿路上皮癌治療においてもプラチナ製剤はキードラッグとなるが,その抵抗性が問題となる.そこで,我々は,化学療法抵抗性尿路上皮癌に対する有効な治療法開発を目的とし,網羅的遺伝子発現解析により膀胱がん幹細胞株からHLA-A*02:01拘束性のClaspinペプチド(HLA-A2/Claspinぺプチド)を新規癌抗原ペプチドの候補として同定した.さらに,樹立したCDDP耐性(CR)膀胱がん細胞におけるClaspinの発現増強,Claspin遺伝子の欠失による耐性細胞株のCDDP感受性の増大を示し,CDDP耐性に対するClaspinの重要な関与を明らかとした. 本研究では,HLA-A2/Claspinペプチド複合体を発現する細胞を特異的に認識する組換え一本鎖可変フラグメント抗体(scFv)の3つのクローンを単離した.続いて, HLA-A*02:01発現細胞株(T2)へのペプチド添加試験によりFACS解析で標的抗原であるHLA-A2/Claspinぺプチドに対し最も結合能の高い1クローンを選択し,二重特異的 T 細胞結合抗体 (BiTE 抗体),scFvにヒトIgG1 Fc領域を連結した二価抗体(scFv-Fc) を発現・産生する安定発現細胞株を樹立した.さらに,CD3ζ活性化ドメインとCD28膜貫通ドメインを連結したキメラ抗原受容体 (CAR) T細胞を作製し,特性評価を行った.各々Claspinペプチド添加T2細胞や膀胱がんCR細胞との相互作用を認めた.さらには,BiTE抗体は,健常人末梢血 T 細胞と膀胱がんCR細胞の共培養下において両細胞を架橋し,併せてT細胞を活性化させることで標的細胞であるCR細胞に対する強い細胞傷害能を誘導することが検証された.
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