2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K20778
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 眞 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60962222)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | CAR T療法 / T細胞疲弊 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞の疲弊化や幹細胞性の喪失は、固形がんに対するChimeric Antigen Receptor (CAR) T細胞療法抵抗性の大きな要因である。当研究室では、核内受容体ファミリーNR4Aが疲弊化の中心となる転写因子であることを報告している。さらに、疲弊CAR T細胞をステムセルメモリー様CAR T細胞へと転換する培養法を確立している。 本研究では、CAR T細胞による治療がより困難であるHER2弱陽性がん細胞株を標的に、CRISPR/Cas9によるNR4A欠損もしくはドミナントネガティブNR4A (DN-NR4A) 遺伝子導入によって、HER2 CART細胞の抗腫瘍効果の改善を試みた。 In vitro疲弊実験の結果、NR4A欠損もしくはDN-NR4A導入は、サイトカイン産生や増殖能、細胞傷害活性などの抗腫瘍効果の増強、疲弊抵抗性を付与することを明らかとした。さらに、bulk RNA-seqの結果、DN-NR4A導入 CAR T細胞は、細胞増殖やミトコンドリア代謝関連遺伝子の増加が認められた。また、in vivo固形がん治療モデル実験の結果、DN-NR4A導入CAR T細胞では、腫瘍局所において、セントラルメモリーCAR T細胞の選択的な増殖を伴った抗腫瘍効果の増強が認められた。 本年度の研究より、DN-NR4A導入は固形がんに対するCAR T細胞の抗腫瘍効果を改善することが明らかとなった。またDN-NR4A導入は、CRISPR/Cas9によるNR4A欠損よりも簡便で細胞へのダメージも最小限に済むため、CAR T細胞の疲弊化を抑制しうる有望な手法であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCAR T細胞の疲弊因子NR4Aの欠損もしくは機能抑制によって、固形がんに対するCAR T細胞の抗腫瘍効果を改善できることを示した。現在、CAR T細胞の抗腫瘍機能をさらに高めうる、より最適なDN-NR4Aコンストラクトを再構築し、in vitro実験においてより高い抗腫瘍効果が得られている。さらに並行して、CAR T細胞の疲弊化を抑制し、ステムセルメモリー分化を促進する転写因子を同定することにも成功している。これらの成果から研究は順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、再構築したDN-NR4AをCAR T細胞に導入し、in vivoにおける抗腫瘍効果を検証する。さらに、RNA-seqやATAC-seq、代謝解析を行うことで、DN-NR4Aによる抗腫瘍効果増強のメカニズムを解明する。また、すでに開発されている疲弊抵抗性CAR T細胞と比較検討し、DN-NR4A導入CAR T細胞の有用性も明らかにする予定である。同定したステムセルメモリー転写因子とDN-NR4Aを組み合わせることでより強力な抗腫瘍効果を惹起できるかどうか、完全疲弊したT細胞をリプログラムできるかどうかに関しても検証する。
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Research Products
(4 results)