2023 Fiscal Year Research-status Report
生命予後因子CYLDの病態解析を突破口とした難治性卵巣癌の新規薬物療法の開発
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22K20797
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
三宅 俊介 熊本大学, 病院, 薬剤師 (70964485)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 個別化医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍抑制遺伝子 CYLD に着目した分子病態解析により、卵巣癌患者の中でも標準治療不応・予後不良な患者群に新規薬物治療を提供することを最終目的として、本研究期間内では、CYLD 発現低下時の薬剤感受性変化メカニズムを解明すべく以下の2つのサブテーマを実施し研究成果を得た。 【1】PARP阻害剤使用症例を対象とした腫瘍組織でのCYLD発現と臨床データの相関による病態解析 卵巣癌細胞株を用いた実験において、CYLD発現低下がPARP阻害剤感受性を向上させる可能性が示された。そこで、当院で加療した卵巣癌患者のうち、PAPR阻害剤を使用した症例の腫瘍検体についてCYLD免疫染色を行い、腫瘍組織におけるCYLD発現の高低と治療効果の相関を解析した。その結果、CYLD発現が低下した症例でPFSが有意に短いという結果が得られた。これまでに全症例を対象とした検討で、CYLD発現が低下した症例は生命予後が有意に不良であることが見出されていることから、CYLD発現低下による予後不良効果が極めて大きく、PARP阻害剤に対する細胞レベルの反応性よりも予後不良効果の方が強く表れている可能性が考えられた。 【2】網羅的解析によるCYLD標的分子の探索 CYLD発現を抑制した卵巣癌細胞株を用いてプロテオーム解析を行い、CYLD発現低下による各種細胞シグナルへの影響を網羅的に解析した。CYLD発現低下細胞では、細胞の有糸分裂関連シグナルが活性化しており、また、PARP阻害剤処理により免疫関連タンパク質の発現が有意に上昇することが見出された。CYLD発現低下は有糸分裂の障害を介してPARP阻害剤の感受性亢進を引き起こしている可能性があり、さらにそのメカニズムには免疫系のシグナル活性化が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題では、CYLD 発現低下時の腫瘍組織変化の分子メカニズムを解明することで、卵巣癌の新規治療法を見出すために以下の手順で実行を計画していた。①腫瘍組織での CYLD 発現と臨床データの相関による病態解析②網羅的解析による CYLD 標的分子の探索③CYLD 発現低下時の新たな治療候補分子標的薬の探索④動物モデルを用いた前臨床試験 しかしながら、2023年9月~2024年3月に研究代表者の予期せぬ病気休職があり、研究の進捗が遅れている。2024年4月より復帰したため、今後は正常に進展することが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間全体の目標である、CYLD に着目した分子病態解析により卵巣癌患者の中でも標準治療不応・予後不良な患者群への新規薬物治療の提供を実現するため、昨年度から引き続き、本年度は以下の項目を中心に研究を実施する。 【1】プロテオーム解析の結果に基づき、有糸分裂関連シグナル、免疫系シグナルその他変動の見られた分子について、卵巣癌細胞株を用いてその発現変動の詳細を確認し、当該分子を標的とした薬剤の感受性プロファイリングを実施する。 【2】前項までに見出された治療薬候補についてマウスモデルを用いた前臨床試験を行い、CYLD 発現を薬剤選択マーカーとする新規治療法について、臨床応用へ向けたエビデンスを構築する。
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Causes of Carryover |
当初、2022年4月~2024年3月で終了する研究計画を立案していたが、2023年9月~2024年3月に研究代表者の予期せぬ病気休職があり、予定していた実験が行えなかったため、次年度使用額が生じた。2024年4月より復帰したため、次年度使用額分の助成金を使用し、病気休職期間に当初予定していた、各種細胞シグナル変動に伴う薬剤感受性変化に関する細胞実験および動物実験を実施する。
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