2022 Fiscal Year Annual Research Report
シングルセルとエピゲノム解析による腫瘍特異的リンパ球の疲弊及び免疫逃避機構の解明
Project/Area Number |
22K20810
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
篠原 周一 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫制御TR分野, 研究員 (30966023)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2023-03-31
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Keywords | シングルセル / T細胞疲弊 / エピゲノム / 免疫微小環境 / 肺癌 / trajectory解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
CTLの疲弊メカニズムの解明において、シングルセル解析により、疲弊化したCTLがどのような状態にあるかを把握することが可能となり、様々なクラスターとの相互作用やネットワーク、免疫学的な分化段階を明らかにできる。我々は6例の肺癌手術切除症例からCD8陽性T細胞をflowcytometryにより抽出し10Xのキットを利用してシングルセル解析を行った。17,247個のCD8陽性T細胞を解析対象とした。Exhausted cluster(Tex)はTim-3, LAG-3, CTLA-4などの免疫疲弊マーカーの発現が高く、疲弊状態にあることがわかった。Progenitor exhausted cluster(Tpex)においては、上記の疲弊マーカーの発現がやや高いものの、Ki-67の発現が有意に高くTexよりも幼弱な集団である。またTCRレパトア解析からTpexにおいてはTexと共通するTCRを持つ集団が存在し、共通の抗原を認識している可能性が示唆された。さらにMonocle2を用いたtrajectory解析により、TpexとTexは連続性を有する分化段階にあり、Texの前段階としてTpexが存在する可能性が示唆された。以上の点から、TpexはTexよりも疲弊していないかつ腫瘍特異的な集団の可能性があると考えられた。さらにTexに関してclonalityの高いTCRを選び、ネオアンチゲンとの反応性を検証する実験系を開発し、その結果複数のTCRとネオアンチゲンのペアを同定することができた。同定されたTCRをもつ細胞集団はほとんどTexに存在していたが、一部Tpexにも共通したTCRをもつ集団を同定しえた。以上の点から、Tpexに存在するネオアンチゲンを認識する集団が疲弊化前段階にありかつ細胞障害活性の高いCTLである可能性が高く、疲弊化メカニズムの解明においてカギになると考えた。
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