2022 Fiscal Year Research-status Report
Role of pancreatic beta cells in the regulation of aging and longevity
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22K20869
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
村尾 直哉 藤田医科大学, 医学部, 助教 (70964675)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | インスリン / 老化 / 膵β細胞 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病は代表的な老化関連疾患である。膵β細胞はインスリン分泌により全身の代謝を制御していることから、β細胞機能の加齢性変化は個体老化や加齢に伴う糖尿病の発症と密接に関連していると予想される。本研究は、「β細胞機能の加齢性変化の分子機構を解明し、β細胞を標的とする抗老化医療を実現する」ことを目標とし、以下の3課題を設定して研究を行っている。 【課題1】細胞内代謝によるβ細胞の加齢性変化の制御機構の解明: 細胞実験を行い、当初想定した細胞内NAD代謝の変容のみでは、加齢に伴うβ細胞の変化を説明できないことが明らかとなった。他の細胞内シグナルや全身性の因子を考慮する必要性が示唆された。 【課題2】β細胞の加齢性変化が個体老化に及ぼす影響の解明: 高齢マウスβ細胞の主要な表現型として、グルコース応答性インスリン分泌(GIIS)の亢進が認められる。薬剤投与により任意の時期にβ細胞のGIISを抑制可能な組換えマウスの作成を進めた。このマウスと野生型マウスとの個体老化を比較することにより、β細胞の加齢性変化が個体老化に及ぼす影響を評価できると期待される。 【課題3】薬剤・食事によるβ細胞の加齢性変化の制御法の開発: マウスを用いて、GIISを抑制しうる食事の栄養組成を検討した。低タンパク質・高炭水化物食(LP)が、GIISを抑制する一方で耐糖能を悪化させないことを見出した。ただし、LPは筋肉量を低下させたことから、栄養組成の更なる最適化が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題2)β細胞の加齢性変化が個体老化に及ぼす影響の解明 代表者らは先行研究において、高齢マウスβ細胞の主要な表現型としてグルコース応答性インスリン分泌(GIIS)の亢進を見出している。ATP感受性Kチャネル(KATPチャネル)はGIISに必須の分子であり、これが欠失するとGIISが強く抑制される。 したがって、野生型マウスとβ細胞特異的KATPチャネル欠損マウスの個体老化を比較することにより、β細胞の加齢性変化が個体老化に及ぼす影響を評価できると期待される。 薬剤投与により任意の時期にKATPチャネルをβ細胞特異的にノックアウト可能な組換えマウスを作成中である。2022年度中のコロニー樹立を見込んでいたが、繁殖状況により不可能であったため、「やや遅れている」評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1)細胞内代謝によるβ細胞の加齢性変化の制御機構の解明 インスリン受容体阻害薬であるS961は、全身のインスリン抵抗性を誘導することによって、β細胞の老化を促進することが報告されている。S961を持続投与したマウスの単離膵島において、インスリン分泌測定およびメタボローム解析を行い、高齢マウスの膵島の表現型と比較する。高齢マウス膵島と同様に、S961処置膵島においてもGIISの亢進が認められるかを検証し、その分子機構を検討する。 課題2)β細胞の加齢性変化が個体老化に及ぼす影響の解明 薬剤投与によりKATPチャネルをβ細胞特異的にノックアウト可能な組換えマウスを樹立し、ノックアウトが全身代謝に及ぼす急性・慢性効果をそれぞれ明らかにする。 課題3)薬剤・食事によるβ細胞の加齢性変化の制御法の開発 LPの抗老化医療への利用可能性を検証するため、LPと薬剤等の同時投与により筋肉量低下を抑制できるかを検討する。さらに、LPがマウスの個体老化、寿命に及ぼす影響を検討する。
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Causes of Carryover |
2022年度中にKATPチャネルをβ細胞特異的にノックアウト可能な遺伝子組換えマウスを用いた実験を開始する予定としていたが、マウスの繁殖が遅れたため開始出来なかった。 次年度使用額は、当初2022年度に予定していた当該実験のために使用する予定である。2023年度年度分として請求した助成金は、主にその他の実験のために使用する予定である。
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Research Products
(4 results)