2022 Fiscal Year Research-status Report
高嗜好性食品への嗜癖が生じるメカニズムの解明:依存性薬物との違いに着目して
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22K20902
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中村 祐樹 久留米大学, 医学部, 助教 (90446104)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 高嗜好食 / 線条体 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物依存の形成には、線条体におけるドパミンの過剰放出と、それに伴う線条体ニューロンの長期的な機能変化が必要だと考えられている。我々はこれまでに、コカイン投与によって、線条体の各ニューロン(D1ニューロン、D2ニューロン)で長期的に発現が変化する遺伝子群を同定し、報告してきた。高嗜好性食品への嗜癖は、薬物依存と同じメカニズムが存在すると考えられているが、両者の類似点、相違点の詳細はわかっていない。そこで、本研究では、高スクロース餌を過剰に摂取するようになったマウスの線条体の各ニューロンにおける長期的な遺伝子発現変化を解析した。TRAP法とRNAseqを用い、線条体の各ニューロン(D1ニューロン、D2ニューロン)における遺伝子発現の解析を行い、高スクロース餌の過剰摂取に伴って、線条体で発現が長期的に変化した遺伝子を検索した。その結果、線条体D2ニューロンにおいて、高スクロース餌の過剰摂取により長期的に発現が変動する遺伝子群を同定した。これらの研究結果により、高嗜好性食品への嗜癖形成において、線条体D2ニューロンにおける長期的な遺伝子発現の変化が重要な役割を果たしていることが示唆された。 今後は、同定した遺伝子が嗜癖行動や線条体ニューロンの形態に与える影響を明らかにしていく。さらにファイバーフォトメトリーを用いて、高嗜好性食品への嗜癖形成によって線条体におけるドパミン分泌動態がどのように変化しているのかを検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線条体の各ニューロン(D1ニューロン、D2ニューロン)における遺伝子発現の解析を行っており、おおむね計画通りに研究が進展している。ファイバーフォトメトリーシステムとモノアミンセンサー(ドパミンセンサー)を用い、高嗜好餌摂取時の線条体ドパミンの動態を高時間分解能で解析する実験系を立ち上げており、今後は、高嗜好餌の摂取に伴う線条体ドパミン動態に変化を、行動の変化と対応させながら解析していく。
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Strategy for Future Research Activity |
ファイバーフォトメトリーシステムとモノアミンセンサー(ドパミンセンサー)を用いて、脳内のドパミン動態を高時間分解能で解析し、行動の変化と対応させ詳細なメカニズムを解明する。 DAセンサーをアデノ随伴ウイルス (AAV) によって線条体に注入し、ファイバーフォトメトリーを用い、高スクロース餌摂取後の線条体におけるドパミン(DA)濃度の動態をミリ秒単位で経時的に明らかにする。これらの解析により、嗜癖の行動とモノアミン動態との因果関係を解析する。 今回同定した遺伝子のノックアウトマウスの解析により、同定遺伝子の嗜癖形成における役割を明らかにする。 ゴルジ染色や走査型電子顕微鏡FIB/SEMを用い、線条体ニュー ロンの樹状突起スパインの形態変化の解析を行い、嗜癖形成と線条体ニューロンの形態変化との関連性を解析する。
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Causes of Carryover |
本年度はほぼ予定通りの使用額となったが、次年度へ若干額が繰り越しとなった。次年度に使用予定の必要消耗品として使用する予定である。
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