2022 Fiscal Year Research-status Report
全身性強皮症の皮膚硬化におけるCXCL16の関与と治療ターゲットとしての検討
Project/Area Number |
22K20909
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井川 徹也 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40962791)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 全身性強皮症 / ケモカイン / CXCL16 / 皮膚硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、全身性強皮症の皮膚硬化におけるCXCL16の役割を解明することである。最初に、健常者皮膚と全身性強皮症患者の皮膚を用いて、CXCL16の免疫染色を行った。全身性強皮症患者の皮膚において、CXCL16は線維芽細胞でより発現が高いことが観察された。血管内皮細胞、表皮角化細胞、浸潤細胞には差はみられなかった。 次に、正常ヒト皮膚線維芽細胞をリコンビナントCXCL16で刺激した。この実験では、転写因子FLI1遺伝子を抑制した細胞を強皮症モデルとして用いた。転写因子FLI1の発現低下はヒトの全身性強皮症患者において疾患との関与が報告されている因子である。正常ヒト皮膚線維芽細胞をCXCL16で単純刺激すると、CXCR6の発現が有意に低下、COL1A1、COL1A2、TGFβ1、SNAI1、ACTA2の発現が有意に上昇した。細胞をFLI1 siRNAで処理し、FLI1遺伝子の発現を抑制した状態でCXCL16で刺激すると、CXCL16、CXCR6、COL1A2、TGFβ1の発現上昇がさらに増強された。CXCL16が線維化関連遺伝子の発現を上昇し、強皮症モデルの細胞でさらにそれらの発現が増強されている可能性が示唆された。 次に、CXCL16を抑制することで皮膚硬化が改善するかマウスを用いて実験を行った。マウスにブレオマイシンを注射することで強皮症モデルマウスを作製できるが、同時にsiRNAを用いてCXCL16の発現を抑制した。その結果、CXCL16を抑制した状態でブレオマイシンを投与すると真皮の厚みが薄くなり、各種線維化関連因子(Col1A1, Col1a2, Ctgf, Tgfb1, Snai1, Acta2)の発現低下も確認できた。以上から、CXCL16は強皮症の線維化に関与していることが示唆され、それを抑制することで皮膚硬化を抑制できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CXCL16の全身性強皮症の皮膚の線維化における役割が明らかとなった。また、CXCL16を抑えることで皮膚硬化が軽減されることが示された。ここまでで、概ね半分程度の実験を完了できた。当初の仮説と同様の結果が得られたため、予想通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、CXCL16の刺激がもたらす線維芽細胞内シグナル伝達がどのように各種線維化関連因子の発現に関与しているのか精査していく。また、そのシグナル伝達は膜貫通型CXCL16を介したものなのか、それともCXCR6を介したものなのかも検討を行う。 TGFβの下流にある線維化関連因子の発現が低下していることから、Smad3のリン酸化にCXCL16が関与しているのかをウェスタンブロットを用いて評価するところから開始する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は節約して使用したため、予算を使い切ることはできなかった。次年度はウェスタンブロットに使用するゲルや各種試薬(抗体など)の購入や、siRNAの購入に充てる予定である。特にウェスタンブロットに使用する抗体やsiRNAは高価であるため、予算を十分に活用できると考えている。
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