2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚バリアを担う角質細胞脂質エンべロープの形成機序の解明と魚鱗癬治療への展望
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22K20918
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 靖敏 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (00962797)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質エンベロープ / 魚鱗癬 / 皮膚バリア / ABCA12 / SDR9C7 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では遺伝性角化症の一つである、道化師様魚鱗癬(harlequin ichthyosis. 以下 HI)の病態解明を目指し、新規治療法開発に直結する基礎的なデータを得ることを目的とした。1つ目は、Abca12機能喪失変異によるHIモデルマウスにおけるcorneocyte lipid envelope(以下 CLE)の形成状態を解析し、CLEを形成するアシルセラミドの由来を解明する。2つ目は、 ABCA12変異を持つHI患者、および、健常者皮膚角層のテープストリッピングによる脂質解析を行い、ABCA12変異による角層の機能脂質の組成の変化を明らかにすることである。 透過型電子顕微鏡を用いてCLEの形成を形態学的に評価した。組織検体にあらかじめPyridine処理を行うことで、透過電顕の観察時に、CLEを可視化することができた。すでにAbca12、Sdr9c7のモデルマウスのCLEを可視化することができた。 ABCA12機能喪失をもつ患者と健常者に皮表面のテープストリッピングを行い、角層を採取した。採取した角層をメタノールに浸して超音波処理を行い、遊離セラミドを除いて角質のみにした。その後アルカリ処理によりオメガ水酸化セラミドとして遊離させ検出した。検出した脂質発現の差を検討し、CLEの形成状況を解析した。ABCA12機能喪失患者では形成状況は健常人と有意な差は認められなかった。 Abca12機能喪失モデルマウスと野生型マウスについて、胎生18.5日で帝王切開を行い胎児マウスの皮膚組織を採取した。採取した組織からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行い、脂質関連の遺伝子発現の差を検討した。脂質関連の遺伝子発現の低下はなかったが、炎症性サイトカイン関連の遺伝子発現の増加を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要な研究のうち、採取した組織をもちいて、liquid chromatography-mass spectrometry (LC-MS)分析を行い、角層の多様な機能脂質の発現量、組成の差を検討し、CLEの形成状況を解析することを残している。他の研究については予定通りに進行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
採取した組織でLC-MS分析を行い、角層の多様な機能脂質の発現量、組成の差を検討し、CLEの形成状況を解析する。データをまとめて論文化する。
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Causes of Carryover |
検体の脂質を解析するために必要な費用であったが、本年度では検体の準備が間に合わなかったため、次年度に解析することになり、次年度に使用額が生じた。
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